【主張】合同労組事件が過去最高
中央労働委員会が、さきごろ公表した平成25年の不当労働行為事件集計結果によると、全体の初審係属件数が急速に減少している一方で、いわゆる合同労組事件だけが拡大している。近年、多くの企業は個別労働紛争への対処に腐心してきたが、これが一段落したら、改めて合同労組事件にしっかり目を向ける必要がある。
新規申立のうち合同労組事件の割合をみると、平成13年は49%と半数に留まっていたが、19年に60%を超え、25年(275件)は75%にまで拡大し、過去最高となった。
つまり、今日の集団的労働紛争は、企業の枠を超えた地域単位などで組織するユニオンが一方当事者になるケースが主流となったのである。企業内組合に組織されない非正規労働者の増加に沿ってこうした地域ユニオンの役割が拡大してきた。
最も対処が難しいのは、「駆け込み訴え」である。不当労働行為がはっきりした段階で、労働者が地域ユニオンに新たに加入し、突如として救済を申し立てる事件だ。合同労組事件のうち約40%がこのパターンに入る。労使協調を重視する企業内組合とは異なり、金銭的要求などを巡って紛争が激化しやすいのが実情といえる。地域ユニオンの幹部は、半ば交渉のプロであり、広範囲な情宣活動を背景に高い要求を突き付けてくる。軽視していると企業側が大きな代償を払わされることになりかねない。
合同労組事件に詳しい髙井・岡芹法律事務所の岡芹健夫弁護士は、不誠実団交などと評価されないよう細心の注意を払いながら、粘り強く交渉することが肝要としている(本紙・25年連載「どう向き合う!合同労組」)。十分な法的知識を前提とし、間違っても裁判所への提訴につながらないよう努力すべきという。
合同労組側としても、長期間にわたって費用と労力をかけられない事情があり、粘り強い交渉を続ければ、当初の要求から譲歩した内容で妥結しようとする傾向にある。愛知経協も「合同労組ガイドブック」を既に刊行しており、対処法を予め習得し、紛争の不必要な拡大を避けたい。