【主張】管理監督者の明確化急げ
「管理監督者」(労働基準法第41条第2号)の範囲明確化が急がれる状況となってきた。今回、厚生労働省がまとめた「今後の労働時間制度の在り方」についての報告書では、後段の方で「管理監督者の範囲について、引き続き既往の通達等の趣旨の徹底を図る」とだけ指摘しているが、次の労基法改正では、その範囲がより明確になるよう具体策を打ち出してもらいたい。長年にわたって問題視されてきたものの、後回しになっている。
「管理監督者」を隠れ蓑にして、労働時間管理を行わず割増賃金を支払わない企業が後を絶たない。昨年11月に実施した全国一斉監督でも、正社員の多くを「管理監督者」として扱い、長時間にわたる時間外労働に割増賃金さえ支払っていなかった企業が表面化している。同様な”拡大解釈”をしている企業が少なくないことは想像に難くない。
新たに導入を予定している「高度プロフェッショナル制度」とのバランスも悪い。高度プロ制度の適用労働者は、時間外・休日・深夜にわたる労働時間規制の適用を除外しているが、より経営者に近いはずの「管理監督者」は深夜労働規制の適用から外れていない。
以前、自己管理型労働制の導入が政策課題となった際にも、「管理監督者」との棲み分けが課題となったことがある。つまり、自己管理型労働制を創設する場合は、「管理監督者」がより経営者に近い位置付けにあることを考慮して、「要件の明確化及び適正化を図るべきである」との意見が出ていたのである。今から10年近く前のことだ。
その後、厚労省は「名ばかり管理職」や過労死で社会問題となった飲食チェーン店店長の適用指針に関する通達を発出したが、時間とともに社会的認知度が急速に弱まり、その他の業種を含め、結局はまた”拡大解釈”の横行に至っている。通達レベルでは、労使双方への広まり方に弱さを感じざるを得ない。
業種の違いによる特殊性もあり、通達の内容をそのまま法律にして良いかどうかは十分検討の余地はあるが、対策強化を急ぐ必要がある。