【主張】建設人手不足に妙手はないのか
東京五輪、リニア中央新幹線など建設投資は目白押しの状態である。建設業界はこの20年間縮小の一途を辿っていたが、まさに一変した好機の到来である。しかし、業界では、浮かぬ顔の状態であるという。なぜか。
現在、東日本大震災の復旧工事、20年目を迎えた阪神・淡路大震災の再建設工事、消費税増税を前にしたマンション建設工事などを抱え、深刻な人手不足状態に陥っているからだ。これも人災であるというから、悩みは深い。
建設業界で働く労働者は、12年平均で503万人を数えているが、ピーク時(97年)に比べ182万人減った。バブル崩壊以降、離職者が急増した結果だが、これも自ら招いた人災というから、如何ともし難い。「リーマン・ショック後は、民間工事では日給1万円も稼げない時期が続き、ワンコイン(時給500円)大工と呼ばれる職人まで現れた」(13年12月7日付け週刊東洋経済)。最低賃金を大きく下回る法違反が横行する業界に若者が魅力を感じていないのは極論すれば、自業自得といっていい。国土交通省は、公共工事に携わる職人の目安となる「労務単価」を7.1%引き上げて1日当たり1万6190円とした。昨年4月にも16年振りに15.1%引き上げており、年度内2回見直しという異例の措置を取ったものの、実際の労務費はこれ以上上昇しているという。
厚生労働省の平成24年職種別賃金調査(本紙第2913号8・9面参照)によると、人手不足が深刻な型枠大工の所定内賃金は、274.6千円(49.0歳)、とび工297.1千円(39.5歳)、大工313.5千円(46.4歳)となっている。同年齢クラスの大学講師は、475.7千円とその開きは大きい。3職種とも一人前になるには10年以上かかるといわれ、労多くして功少なしの感がある。国交省と厚労省では、「建設業における技能労働者の処遇改善」に取り組み、その結果が労務単価に結び付いた。さらには、外国人技能実習制度に特枠を設けて受入れを検討中のようだが、一人前に養成するのに「3年」では何の効果も期待できそうにない。