【主張】期待高まる金銭解決制度の実現
内閣府の規制改革会議は、このほど開いた会合で、労働規制緩和に関する6項目の「課題」を提示した。そのなかの一つに解雇があり、念頭に金銭解決制度の存在をうかがわさせると、本紙3月4日号1面報道はいう。
これより前、経済財政諮問会議の民間有識者議員は、正社員終身雇用偏重の雇用政策を改めて、多様で柔軟な雇用政策に転換すべきであるとした意見書をまとめた(同2月25日号1面)。政権が代わって以降、緩和から規制に向かっている労働政策を旧に復せよという注文がめだってきたように感じる。もっとも、後者では、主管の甘利内閣府特命担当大臣は、会議後の会見で「雇用法制を今までの法制から柔軟にして、いつでも首を切れるようにしてくれというような話とはまったく違います」と断言しているが元労働大臣だけに、経営側はある種の期待感を持ったようだ。
そこで思い起こされるのは厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会が、平成18年12月に厚労大臣に答申した「今後の労働契約法及び労働時間制度の在り方について(報告)」である。これには「解雇の金銭解決制度」が盛り込まれたが、ご承知のとおり労働契約法では見送られた。
解雇の金銭解決制度の法制化構想は、平成14年に出された総合規制改革会議による「中間とりまとめ―経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革―」で初めて登場し、平成15年の労働基準法改正論議にも使用者側の要求によってテーブルに乗ったものの労働者側の猛反対に遭い、見送られた経緯がある。その後も使用者側はあきらめずに要求を続け、平成16年の閣議決定「規制改革・民間開放推進3カ年計画」にも盛り込まれたが、解雇権濫用を危惧する労働側攻勢に敗れている。
その後、平成18年に施行された労働審判制度では、労働弁護団所属の弁護士執筆による本紙13面連載のとおり、職場復帰より金銭解決の方が圧倒的に多い。労使紛争統計(平成22年)では、合同労組が7割も占める関係からか、「解決金」で片付いている。外堀は埋まった。本丸まで行けるか未知数だが期待は高まろう。