【主張】技能実習職種の拡大望む
外国人技能実習制度の大幅改正に向けた法案が今国会に提出される。法務省と厚生労働省が一体となって検討した結果、技能実習適正化法を創設するとしているが、これによりあらゆる方面に配慮が利いた制度案となった。両省が連携を強めることによって、同制度を大きく前進させた点を高く評価したい。
しかし、技能実習生の受入れ枠拡大については、わが国の人手不足の現状をみると決して十分とはいえない。一定の要件を満たす監理団体、実習機関に対し再実習を認める技能実習3号を創設するとしたほか、優良な受入れ機関や常勤職員数に応じた人数枠の拡大などが図られる予定だが、労働力人口が急速に縮小しつつある状況をみるとさらに一歩進んだ対策が求められる。
同制度は、発展途上国労働者の技術・技能の向上や国際貢献を目的としているが、実はそれだけで制度化したわけではない。地域の中小企業の人手不足対策としての位置付けも重要な要素であった。
同制度がスタートした1990年ごろは、厳しい人手不足が社会問題となり、移民受入れ論も検討課題に上ったほど。しかし、移民や単純労働者の安易な受入れは、景気が後退したときのことを考えると、日本人の雇用不安や治安の悪化、さらには社会的コストの増大の危険性などが生起しかねないとし、結局、技術・技能労働分野に限り外国人労働者を受け入れる同制度の導入に落ち着いた。
つまり、中小企業の人手不足対策としての目的もあったのであり、実際にそのように機能してきた。近年の論調をみると、発展途上国に対する国際貢献の側面だけが強調されているようだが、同制度スタート時から歯車の一方でしかなかったのである。
実習実施機関の半数以上が、従業員19人以下の零細企業であることを考えると、実習制度の適正化を強力に図りながら受入れ枠を拡大し、今後の人手不足緩和、地域中小企業の発展・活性化につなげるという発想も必要だろう。とくに、地域特性に応じた職種拡大などに力を入れるよう望みたい。