【主張】外国人実習制度はもはや壊滅か
外国人研修・技能実習制度は、開発途上国から外国人を招き、各種の技能・技術等の習得を援助して人材育成を行い、わが国が有する汎用性の高い技術を移転することで国際社会に貢献する制度であり、もう20年を超す歴史を持つ。この間、法改正や法務省告示によって、軌道修正が図られたが、建前とはほど遠い実態にある。
09年に出入国管理及び難民認定法が改正され、労働関係諸法令の適用がない研修生から、適用のある技能実習生に移行するスタイルが10年7月、技能実習制度に一本化され、来日1年目から労働関係諸法令が適用されることになった。これによって、実質的に低賃金労働者から解放されるとともに研修期間中に旅券や預金通帳を取り上げられたり、預金を強制されるなどの悪質な人権侵害の横行も一掃されると期待された。
ところが、実態はまったく変わっていない。本紙の報道(2月18日付け3面)によると、岐阜労働局が外国人実習生受入事業場に立入調査を実施したところ、虚偽説明や帳簿の改ざん・提出拒否などの隠ぺい行為が続出し、結果的に監督対象事業場の違反率は8割に上り、過去5年間で最悪のものとなった。法改正の趣旨がまったく生かされなかったということで、法務省や厚生労働省などの監督主管官庁は、面目丸潰れである。
制度は、企業が外国の現地法人から受け入れる企業単独型と事業協同組合や商工会議所などの団体が、外国の送出機関と協定を結んで傘下の中小企業に受け入れる団体監理型の2つがある。09年当時では、後者が91.4%と圧倒し、その約85%は中小企業への受入れで、しかも従業員規模50人未満が62.2%に上っている。このことから推測されるのはコンプライアンス意識の脆弱性。本紙報道でも時間外時給を300~500円に設定しているケースがほとんどで「法定割増率の不足以前に最低賃金を下回る」ことを大っぴらにやっている。もはや救いようのない状態だ。3月の実習生による殺人事件は、零細事業者での低賃金労働者確保の延長線上といえ根本的解決が迫られている。