【主張】「解雇法制」の前進を望む
内閣府の規制改革会議雇用ワーキンググループ(鶴光太郎座長)が、「労使双方が納得する雇用終了の在り方」について検討を開始しており、議論の行方が注目される。
検討の柱は、いわゆる「解雇の金銭解決制度」をどのように組み立てるかだが、それ以外にも解雇紛争の未然防止と転職支援策、行政機関による紛争解決機能のさらなる充実策などが課題に上っている。雇用終了に関する規定や制度を総合的に再検討した上で、充実を図ろうという試みであり大いに期待したい。
わが国の民法と労働基準法の定めによると、労働者の解雇は事業主が30日前に予告すれば自由に行えることになっているが、判例の積み重ねにより形成された解雇権濫用法理がこの自由を大きく修正している。労使ともに広く理解されなければならない法理だが、実際には周知されず、しかも難解である。
2007年の労働契約法改正により、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」として明文化したが、これだけで理解が深まるとは到底考えにくい。
いわば、わが国労働法制の最大の弱点といってもいい。こうした弱点が不必要な労使紛争を呼び、結果として社会・経済のロスにつながっているのが現実である。
同ワーキンググループでは、厚生労働省が昨年3月に作成した「雇用指針」をベースとして、現行解雇規制の網羅的解説を深める一方で、新たな解雇ルールを創出しようとしている。
例えば参考とされているフランス解雇法制では、解雇要件が整わない場合、裁判所の提案などに基づき復職または解雇補償手当に加えて賃金6カ月分以上の損害賠償の支払いを制度化しているという。
新たな解雇ルールが労働者の立場を弱めたり、雇用不安を助長する内容ではもちろん受け入れられないが、予見可能性の向上による紛争防止や起こってしまった紛争のスムーズな解決に寄与できれば、わが国労働法制の大きな前進である。