【主張】生活扶助引下げに最賃肩透かし
平成24年度の地域別最低賃金に関する地方最賃審議会の調査審議の結果、確定した地域別最賃額は、全国加重平均額で749円となり、前年度の737円を12円上回った。中央最賃審議会が示した目安額は、ランクA5円、ランクB~D4円だったが、全ランクで目安を上回り、最低ランクに所属する東北、山陰の各県が6~8円引き上げられており、パート求人賃金に近い地方での上昇は、商業・サービス業者の頭を悩ませているところだ。その元凶といえるのが、平成20年7月1日から施行された改正最賃法。
改正法では、地域における労働者の生計費を考慮する場合に、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、新たに生活保護に係る施策との整合性を考慮するという決定基準の見直しを行った。最賃法第9条第2項で、地域における労働者の生計費および賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮することを謳い、同第3項の「前項の労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」という規定がそれだ。
以降、地域最賃は急ピッチで上昇したが、前年11都道府県あった生活保護水準との逆転のうち、5府県で解消したものの、まだ東京・大阪・神奈川・広島・宮城の6都府県で下回っている。約214万人が受給し、過去最多を更新する生活保護費は、国や自治体の財政を圧迫する社会保障費見直しの一環として、今年8月から食費や光熱費に当てられる「生活扶助費」の引下げが決まった。
これにより、アップに歯止めがかかることが期待されるのだが、政府は、衆議院議員提出の「安倍内閣の格差・貧困対策等に関する質問主意書」に答え、地域最賃は生活扶助費に連動するものではないとする考え方を示した(本紙3月11日付1面参照)。悲鳴を上げていた地方の商業・サービス業経営者は、見事に期待を裏切られた。デフレ脱却には、購買力を高める賃上げが必要なことは否定しないが、支払能力基準にも配慮が欲しい。