【主張】“執拗な”カスハラ回避へ
厚生労働省は、精神障害の労災認定基準の次期改正で、労災審査時に考慮すべき類型としてカスタマーハラスメントを追加する方針だ(関連記事=精神障害の労災認定 迅速審査へ評価表見直し 項目にカスハラ追加 厚労省)。
このほど専門検討会で示した報告書案のなかに、業務上の心理的負荷に関する新たな評価表を盛り込んだ。評価項目として、顧客などによる暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求といった著しい迷惑行為を受けたことを追加している。人格を否定されるような言動を反復・継続するなどして「執拗に」受けたケースの心理的負荷を「強」と位置付けている。
労働者の精神障害が労災認定されれば、安全配慮義務違反が問われるリスクは高まる。企業としては、迷惑行為が反復・継続する前に状況を把握し、組織的に対処できる体制を整えておくことが肝要だ。
業務上の強い心理的負荷が認められるか否かの指標となる現行の評価表では、評価対象となる出来事として「顧客や取引先からのクレーム」や「無理な注文」を設定しているが、顧客からの暴行や著しく不当な要求までを含むカスハラ全体をカバーする内容にはなっていない。
そのため新評価表では、カスハラを指す「顧客などからの著しい迷惑行為」を項目として加える。迷惑行為による負荷を評価する際は、行為の内容・程度のほか、執拗性の状況を重視していくという。
想定されるケースをみると、治療を要しない程度の暴行や、人格・人間性を否定されるような発言、威圧的な言動などを受けたものの、反復・継続して受けていない場合の心理的負荷は「中」。一方で、同様の行為であっても反復・継続するなどして執拗に受けた場合は、「強」と判断する。
令和2年に厚労省が行った調査によれば、過去3年間に顧客からの著しい迷惑行為を一度以上経験したことがある労働者は15%に上る。
企業においては、カスハラを原因とした精神障害の防止に向け、担当者1人が迷惑行為を受け続けることがないようチームで対応したり、現場責任者に引き継ぐなど、カスハラへの対処方針を事前に決めておきたい。