【主張】適正化が必要な日々紹介
宇都宮地裁大田原支部が、いわゆる「日々紹介」事案に対する全国でも珍しい判決を下し注目されている(本紙3月2日号3面既報)。日々紹介だったはずの配ぜん人について、実態的には「日々雇用ではなく、期間の定めのない雇用」が成立していたと判断、ホテル側による日々紹介として支払った手数料分の返還請求を認めた事件だ。同支部は、紹介所側に約3000万円の支払いを命じている。
判決では、日々紹介が成立するためには、当然、日々の職業あっせん行為が介在している必要があるとしている。両者間の事前打ち合わせ書面には、「当日求人者の社員として雇われるということを十分に理解なさった上で雇用して下さい」との申し合わせがあったが、形式だけだった。
日々紹介の条件である職業あっせん行為が実際に可能かどうかを考えた場合、多くのケースで疑問符が付く。「明示的な求職申込み」に毎日対応できれば全く不可能とはいえないが、そう簡単ではないであろう。
一定期間のシフト勤務に就けたり、1カ月ごとにタイムカードを配布して就労状況を把握する行為なども日々紹介を否定する要素となっているのだ。
日々紹介は、2012年の労働者派遣法改正で、日雇派遣が原則禁止となったために広がった手法だが、それ以前から行われており、手続きさえ整えればもちろん合法的である。しかし、今回の判決が求める条件をクリアするには、過大な労力やコストがかかることになる。ごく短期間で活用するなら良いが、日雇派遣の代替として比較的長く日々紹介を続けていくと、「期間の定めのない雇用」に転化しかねない。
労働者の雇用安定を考えても問題は多い。日雇派遣が原則禁止となったのも、とくに若者の不安定雇用やワーキングプアが社会的関心を集めたためである。日々紹介がその代わりに活用されるようなことになれば問題はそれほど変わらない。
今回の判決を重く受け止め、手続きを適正化できなければ日々紹介の利用を考え直す機会としたい。