「伝わる」説明を意識 現状を正しく把握して/やまもと事務所 山本 文代
今振り返れば、とくに人と比べて抜きん出た能力も資格も出世欲も持たず、ごく普通に文系の大学を卒業し、400人規模の製造業に入社、本社総務部に配属され、社会保険労務士になろうなどという考えは微塵もなく、社会人人生をスタートした。
稚拙な知識しか持っていなかった私は、七転び八起きしながら社会人としてのモラルや、仕事を進めるとはどういうことかを学んだ。とくに、失敗した時の徹底的な原因究明と「同じ轍は二度と踏まない」ことを自分の鉄則にし、自分にできる最大限のクオリティーをめざして業務に邁進した日々を今も忘れていない。
結局在籍9年半という年月のなかで、総務部が担当していた受付業務に始まり、秘書、給与計算、社会保険業務、規程改正や採用関係に至るまで業務経験を重ねることができた。そのおかげか、転職先の社労士事務所勤務時代は、稚拙だった知識もそれなりに成長していたのだろう、関与する事業主、事業所担当者の方々にはとても大事にしてもらえ、知識と経験をさらに研鑽する充実した日々となった。
そして今の私がとても大切にしていることは、ヒアリング(現状把握力)とプレゼンテーション(説明能力)だ。これは数々の失敗と後悔の念を乗り越え、たどり着いた結果である。
とくに、初動が肝心だ。「事実・実情」を見逃さず、すべての判断材料を自分の思考回路であるまな板の上に載せられたかどうか。正しい現状把握なくしては、自分の知識やツールを打開策に変身させることはできないのだ。
一方、プレゼンテーション(説明能力)も重要である。広く深い見識を保有されている人生の先輩がその見識を誰かに対して「出力」した際のことだ。受け手側の「器」に丁度よく入る状態に変換し損ねて出力してしまい、受け手側が受け取り切れなかった場面を目の当たりにした。受け手側の頭の中を真っ白なキャンバスに例えるならば、その「出力」された情報をもとに受け手側が描く頭の中のキャンバスの絵が、「出力」した側のイメージしている絵と同じ絵になるような説明能力が、非常に大切なことなのだ。
今、労務管理の世界は多くの法改正や国の方針転換などの嵐に直面している。そのなかで、この新しい動きを私なりに「出力」する際、今までの経験を糧に、かかわる方々にとって、丁度良く受け取れる形に変換し情報として届けることで、今後の労務管理の方向性を手繰り寄せる一助となれたら幸いに思う。
やまもと事務所 山本 文代【愛媛】
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