【主張】建設の人手不足は一人親方が鍵
厚生労働省がまとめたところによると、労働災害統計から除外される個人事業主や中小企業の事業主などの建設業における死亡災害が、昨年7~12月の半年間で48件起きていることが明らかになった(本紙姉妹誌「安全スタッフ」5月15日号)。看過できないのは、「一人親方」と呼ばれる個人事業主の被災が26人あり、半数以上に当たる15人は労災保険の特別加入に入っていなかったことだ。
建設業の労災保険は、一括有期事業といい、元請事業者は下請業者の労働者を含めて加入することが義務付けられている。しかしながら、一人親方は独立した自営業とみなされ労働者性が否定されていることから、元請けの労災保険の加入対象とはならない。被災に備えて、個々人で労災保険に加入しなければならないのだが、これが思惑どおりには進んでいない。大手の現場では特別加入していない一人親方は入場禁止という厳しい措置を取っているようだが中小の現場はそうはいかないらしい。厚労省の調べでも工事現場に下請けとして入っていた一人親方は14人いたが、特別加入していなかった者も相当数あるとみられている。厚労省では、引き続き今年1年間の発生状況を集計し、問題点を明らかにしていく、としている。
一人親方の労災加入問題では、元請けも労働者性を認め、労災給付を申請したものの所轄労基署長に否定されたことから最高裁まで争ったケースがある(平19・6・28第一小判)が、報酬の支払い・業務指示の形態等から労働者に該当しないと判断された。
建設業界は未曾有の人手不足に見舞われている。入職する若者は、見習職人から最終的には収入が安定し裁量性の高い「親方」をめざすが、職人を雇い入れてもマネジメント能力に問題のある者はそのひとつ前の段階である「一人親方」を目標としている。職人の目標が、このような状況では二の足を踏まれる恐れが高い。「自由に仕事がしたい」一人親方も高齢化が進み、やむなく選択しているケースも多いという。「夢」無くしてあえてきつい仕事を選ぶ若者はいないのではなかろうか。