【主張】景気の良い話は大企業止まりか
08年9月のリーマン・ショックから5年半が経過した日本経済は、明るい指標で包まれている。厚生労働省が発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.08倍を示し、前月から0.01ポイント上がった。改善は17カ月連続で08年7月以来7年9カ月ぶりの高い水準という。外食産業を始め、建設業・小売業・医療介護といった分野では、人手不足が深刻化しており、必ずしも朗報とはいえない。
有効求人倍率は1.2倍を超えることが目安といわれている。求人側と求職側の思惑がからみ、そのブレを見込んで1.0倍とならない。ひとつ峠を越え、目標値に近づきつつあるのは、就職氷河期の終焉とみることもできそう。
経済産業省は今春、上場企業(有効回答927社)の半数がベースアップを実施したと発表した。賃上げを実施した企業のうち46.7%がベアを実施したが、昨年の7.7%から大幅に上昇している。ベア実施企業の7割はリーマン・ショック以来6年ぶり(本紙6月16日号7面参照)。
経団連は、東証一部上場企業であって、従業員500人以上の主要340社の夏季賞与平均額が前年に比べ、8.8%増の88万9046円となったと発表した。
財務省が発表した14年1~3月期の法人企業統計によると、経常利益は前年同期比20.2%増の17兆4552億円となり、過去最高を記録した。これまで過去最高だったのは、07年1~3月期の16兆6672億円。全産業の売上高は、前年同月比5.6%増の345兆3293億円。
ただ、これらの好指標の一部は、円安の影響下にある輸送用機械や家電など輸出型産業でめだち、恩恵を受けない建設、食料品、陸運業などの内需型産業は取り残されている。規模間格差も相変わらずで、中小企業は今後に期待がかかる。
政策的には、アベノミクスが好循環した結果とまではいえず、外部環境の変化に乗じたものというのが大方の見方だ。国民全体が恩恵に浴する内需型産業の奮起や、コストダウンを強いられる中小企業の好指標出現が待たれるところといえそう。