【主張】期待膨らむ中堅層賃上げ
本紙4月27日付1面によると、大手企業の高賃上げに引き続いて、中堅・中小企業でも健闘がめだっている。4月上旬までの集計では、ベアを含む賃金改善額は2071円となり、比較可能な企業の前年比で600円上回ったという。日本経済の浮沈を左右する中堅・中小の賃上げにも明るい兆しが見え始めたと考えられ、近来にない動きとして注目したい。
例年だと、交渉ステージが時間の経過とともに中小に移るに従って平均妥結額が大きく低下していくのが常で、規模格差の拡大は如何ともしがたい状況にあった。もちろん今回の賃上げで格差改善とまでいえないが、現時点までの状況をみる限り妥結額の大きな落ち込みに歯止めがかかっている。
政労使が連携して賃上げに取り組んだ結果といえるが、とくに政府の強力なテコ入れが功を奏しつつあるのではないか。政府による強い要請に真摯に応えた大手・中小経営者も評価に値する。
政府は、中小企業の賃上げ環境を整えるため、大手企業に対して強力な具体的要請を行った。例えば、原材料費の高騰による仕入れ価格上昇に頭を抱える中小企業に配慮し、損益の分担方法などをあらかじめ合意し、適正な取引価格が形成されるよう求めた。
政府自体も、下請取引ガイドラインの理解・活用に向けた講習会の追加的実施、下請代金法に基づく監視・取締まりの強化、約500社の大手企業に対する追加的・集中的な立入検査など、迫力ある取組みを進めている。
先ごろ開催した政労使会議で安倍総理は「夏に向けて本格化する中小企業の賃上げ環境の整備をもう一歩進める」と決意表明した。アベノミクスにとって、これまで決定的に不足していたのが、全国に広がる中小企業の経営環境改善と賃上げだった。経済の好循環を肌身で感じられない国民層が多くを占めていた理由でもある。
本紙の独自調査による中堅・中小企業の賃上げの流れが確固となれば、重要なカギを握っている実質賃金の今年度中のプラス転換にも期待が膨らむ。