【主張】小売業に安全文化の定着を願う
過日、小欄の居住する地域の中堅スーパーに買物に行った際、見聞したことを報告したい。品物の陳列を終えた入社したばかりとおぼしき店員が、台車に片膝をついて乗り、もう一方の足で蹴って、かなりのスピードで店内を走っていた。このような危険極まる行為を見過ごしているのは、基本ともいえる危険予知訓練はもちろん、安全衛生教育をまったく行っていない証拠と感じた。そのすぐ後、厚生労働省は平成25年~29年にかけて行う「第12次労働災害防止計画」を公表したが、資料には、先の危険行為が普遍的に行われているという不信感を表す数値が羅列されていた。
付属資料には、平成14年と24年を比較した業種別の死傷者数の推移が出ている。全業種合計では、10.9%減を示し、挙げられた建設業(36.2%減)を始め、製造業(25.7%減)、陸上貨物運送事業(9.8%減)と軒並み好結果が出ているなかで第三次産業だけが16.7%増となっている。産業を大分類と中分類をごちゃまぜにした乱暴な統計だが、第三次産業として登場した3事業のうち社会福祉施設の144.7%増は、腰痛症罹患者の増大など固有の作業形態の影響を受けたもので例外とすると、飲食店11.4%増、小売業4.1%増は多分に見せしめ的要素が感じられるにしても、早急な対策を講じる必要がある。
計画目標は、5年間で死傷者数を小売業および飲食店が20%以上減、社会福祉が10%減としているが、何せ実態として「安全文化」意識が薄いのだから、指導する側も相当なテコ入れを覚悟する必要がある。今年度は、東京労働局では経営トップに方針表明を求め、施設管理者と協力した小売店指導を行う。静岡局では、多店舗展開する企業の本社や統括支店を指導し、活動の水平展開を図るなどの施策を打ち出しているものの具体性となると?が付く。中央労働災害防止協会がまとめた災害防止好事例集(平成23年3月)では、転倒・転落、腰痛、刃物によるケガなど具体的なターゲットが示されている。まず、これらを優先的に取り上げ、ゼロ災に近付けよう。