【主張】持株会社が命令の矛先に
中央労働委員会は、今年1月28日付で2つの対照的な命令書を交付した。いずれも「ホールディングス」と呼ばれる持株会社に対する命令で、一方は団交拒否の不当労働行為を認め救済命令を発したが、もう一方はこれを認めず労働組合側の申立てを棄却した。
近年普及しつつある持株会社が、突如として不当労働行為事件に巻き込まれるケースが多くなっており、経営者、管理者は労働組合法や不当労働行為制度の仕組みをよく理解して臨む必要がある。
持株会社は、1997年のいわゆる「金融ビッグバン」により、わが国に導入された新たな企業支配形態である。それまで独占禁止法によって禁じられていた。現在においても株式を取得・保有することによる企業支配の拡大、吸収・合併が進展しているのが実情である。
一つの弱点となっているのが不当労働行為への対応である。株式を保有する傘下企業で労使紛争が発生し、労働委員会に団交拒否などの救済申立てがなされると、往々にして持株会社に矛先が向かう。傘下企業は形式的には法人格が独立していて、そこで発生した労使紛争にはかかわりがないと考えがちだが、不当労働行為の認定基準はそれほど甘くない。
法人格が別でも、持株会社が実態として傘下企業の労働条件決定などに関与していると、思いがけなく団交拒否や不利益取扱いと判断され、労働組合からの要求に応じなければならなくなる。
今年初めの中労委命令のうちの1つは持株会社の団交義務が認定された。レンタルビデオ店などを傘下企業とするゲオホールディングスである。やはり吸収・合併により店舗拡大を続けてきた。店舗で勤務するアルバイトなどが勤務時間に関する団交を要求した。
中労委は、アルバイトの直接の雇用主は店舗経営者としながらも、実際の労働条件決定権はゲオHDにあり、労組法上の「使用者」に当たると認定したのだ。持株会社がどこまで覚悟を持って傘下企業の労務に関与するか、経営戦略上の課題といえる。