【主張】迷走する高齢者雇用安定助成金

2014.07.21 【主張】
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 雇用保険の特別会計を利用した助成金は、いずれも利用率が高いが不正受給には刑事告発するという強行措置も打ち出している。そんな中で、不人気のゆえに、注目を集めている助成金がある。昨年度スタートした「高年齢者雇用安定助成金」がそれだが、利用率は驚くばかりの惨状を呈してしまった。

 助成は、「高年齢者の活用促進のための雇用環境整備の措置」と定年を控えた高齢者を失業を経ることなく雇い入れる事業主に対する「高年齢者労働移動支援」の2つがあるが、いずれも惨憺たる結果となってしまった。

 前者は、中小企業には要した費用の3分の2を、大企業には2分の1を支払う(いずれも上限額500万円)という内容だったが、945件の想定目標に対し、実績は約20分の1に当たる48件に過ぎなかった。

 もっとひどいのは後者で、目標の2025人に対したった1人。両コースの助成額は約4000万円。予算約70億円だから、99%超が余った勘定だ。成長戦略のひとつに置く安倍首相は、状況報告がなされた衆議院決算行政監視委員会で、「問題がある。必要があれば、見直しを指示していく」と答弁したが、不可解なのは、この結果にもかかわらず14年度予算は14億円増額され、84億円に増額されたことだ。

 前年度予算が塩漬けになったから、実質投入額はわずかともいえるが、「初年度ということもあり、PR不足だった」という当局のいいわけを鵜呑みにしたのなら、極めて安易すぎないか。雇用保険被保険者の怒りを買って当然だろう。

 14年度の雇用環境整備は、上限額が倍増し1000万円になり、労働移動支援は、民間職業紹介事業者に加えてハローワークの紹介も対象になったが、起爆剤としてはいかんせん迫力を欠く。

 助成金は、専門の担当者を配置した大企業に偏る傾向があった。高年齢者雇用安定助成金と銘打っているのだから、高齢者が受益者となるように活用していくのが本来求められる姿である。お間違いのなきよう願いたい。

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平成26年7月21日第2977号2面 掲載
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