【主張】パワハラ被害は恐れずに告発を
拳骨でひっぱたくなどは修行道(OJT)の一環、などといってはいけない。今や各界で、暴力はご法度。厚生労働省がまとめた「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」によると、制度は、労働相談を手始めに都道府県労働局長による助言・指導およびあっ旋の申請を受けた労働局長が紛争調整委員会に委任して行う「あっ旋」の3つで構成される。前年度に比べ3.2%減となったものの、総合労働相談件数は、106万7210件に達した。
このうち民事上の相談のトップは、「いじめ・嫌がらせ」で、5万1670件に上っている。過去3年間をみると、主要な相談のうち、解雇・労働条件は対前年度比マイナスを示し、退職勧奨も23年度の3.6%増を除いてマイナスとなっているなかで、いじめ・嫌がらせは、22年度10.2%、23年度16.6%、24年度12.5%のプラスを示し、突出している。スポーツ界の体罰問題が話題を集めているが、職場ではそれ以上の被害者増になっている異常事態が続いているわけだ。
各地の総合労働相談コーナーに出向くほどの「いじめ(パワハラ)」がこの数値だから、実際は日常茶飯事に行われているといっても過言ではなかろう。助言・指導例をみると「店長に馬鹿呼ばわりをされ大声で叱責された。また、出社した際に、店長に挨拶をしたところ直後に頭を叩かれ抗議すると更に叩かれ、謝罪を求めても応じなかった」というのがある。よくぞ民事で済んだもの、刑事事件に発展するのが普通だろう。これを制度が解決に導いたというのだから、大いに評価する。
昨年3月、職場のいじめ・嫌がらせに関する円卓会議(聞いただけで気恥ずかしいネーミング)の組織が「パワハラ予防・解決に向けた提言」を行った。うち上司への期待は「自らがパワハラをしないことはもちろん、必要な指導を適正に行うことをためらってはならない」という内容のものがある。常識人なら当たり前のことだろう。これで「提言」とは恐れ入った。パワハラはネット社会の発展で複雑化する一方。恐れず告発することが第一である。