【主張】公益目安頼りの最賃額改定交渉
7月2日、今年度の最低賃金について審議する第1回目の厚生労働省・中央最低賃金審議会が開かれた。田村憲久厚労相自らが、平成20年以来5年振りに出席し、諮問を行うという予想外のスタートとなった。一方、安倍晋三首相は、政権が2%の物価上昇を目標に掲げていることを踏まえ、8日に最賃額も2%を超える引上げを行うよう、経済界に要望したと伝えられている。公労使で構成される中央最賃審の審議は、労使の折り合いがつかず、このところ公益委員から出される目安額が中心となっているが、今年はどういう展開になるか、と使用者は固唾を呑んで見守っていることだろう。
現在の全国平均最賃額は、時間給で749円。最賃額の分布は、652円(島根・高知)から850円(東京)までとなっており、最高・最低格差は一昨年の192円から198円に拡大した。しかしながら、経済力によって4ランクに分かれているが、昨年はAランク(5円)からDランク(4円)のすべてで目安額を上回った。
とりわけ、東北、山陰、四国、九州の各県が多いDランクでは6~8円の引上げを示し、目安額の2倍にもなった。この背景には、平成22年に政府が政労使で構成した「雇用戦略対話」の「できるだけ早い時期に全国平均800円を確保し、景気状況を配慮しつつ1000円をめざす」合意と平成20年の改正最賃法に登場した「生活保護費に準ずる最賃額とする」という2つの目標がある。アベノミクスが加わって、経営側の守勢は続く。連合は最賃額の引上げについて15年振りに意思結集を図る集会を開き、この中で中央最賃審委員のUAゼンセン田村雅宣副書記長は「CDランクの目安をABランクより引き上げたい」と意気込みを語っている(本紙8月6日号6面)。
最賃額は地方企業のパート賃金に直結している。最賃法第9条第2号には「通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定めなければならない」としているが、環境は極めて厳しい。公益委員の目安額頼りとなれば、経営側はそれで良しといったところだろうか。