【主張】争議減少へさらに努力を
厚生労働省の労働争議統計調査によると、平成25年1年間の総争議件数は507件となり、過去最低を記録した。個別労働紛争は拡大しているものの、ストライキを伴うような争議が大幅に減少していることは歓迎すべきである。
というのは、本紙発行の大きな目的の1つが、労使の相互理解を深め、その安定に資することにあるからだ。労働争議をできるだけ防止して生産性をアップできれば、日本経済にプラスとなろう。
同調査によると、多少の上下変動はあるものの、総争議件数はここ10年間で872件から360件以上も減少したことになる。争議参加総人員は、この5年間で約17万人から約12万人に落ち着いた。
労働組合組織率の減少により、多数の労働者にとって労働組合が身近な存在ではなくなったことが大きいが、日本全体の経済水準や社会環境が一定程度成熟化し、一時期のような厳しいストライキなどを伴う対立の必要がなくなったことは明らかだ。
このところ、いわゆる「中間層」の減少が指摘されているが、他国との比較では国民の経済格差は決して大きくない。個々の労働者にとって、リスクを冒してまで労働組合に参加し、ストライキを打とうとは思わなくなっている。
拡大している個別労働紛争も行政による各種対策が浸透しつつある。厚生労働省による個別労働紛争解決制度や司法機関による労働審判制度などの利用が広がり、周知が行きわたってきた。
個別労働紛争解決制度における民事上の紛争の増加ピークは23年度の約25万件で、以降は徐々に下落している。労働審判の新規申立てについても、年間3500件前後で落ち着きをみせ始めた。
労働政策や労働条件を巡る労使対立や駆け引きはあって然るべきで、そうした矛盾の存在は健全といえるが、ストライキなどを伴ったり、裁判に発展するような紛争は避けるべきだ。
労使ともに必要な情報を共有し、十分な協議を経て平和的な課題解決に尽力すべきである。公的機関も争議の減少をさらに推し進める努力を惜しまないでもらいたい。