【主張】悲観的になる地方最賃審の展開
厚生労働省の中央最低賃金審議会小委員会は、今年度の最低賃金を全国平均で14円引き上げることを決めた。例年、中央最賃審は労使の議論がまとまらず、公益委員案で終結していたが、今年は安倍首相が2%アップで経済界に根回しし、田村厚労相も7月2日の第1回審議会で「経営側に対し、引上げ協力に異例の要請」をしていたため、予想どおりの結果となった。
2ケタ台の目安額が示されたのは3年振りだが、アベノミクスに寄り切られた形となったのは、パートタイマーの時間給が直結する地方経営者には手痛い提示となった。目安額は都道府県の経済状況により、良い順に4ランクに分け、それぞれ示されている。今年はAランク19円・Bランク12円・CランクおよびDランク10円となった。ランクの低い都道府県ほど最賃額の改定動向に注目が集まるが、Aランクなどは、求人賃金を大きく下回っており、さしたる影響はない。円安による景況上昇がまったくない地域では、Aランクに比べて9円も低い目安額という絶対値以上に経営に与える影響は大きいといわれている。まさにそのとおりという声も聞かれる。
最賃法に明記された「生活保護費に準ずる」面では、Aランク東京・大阪・神奈川・千葉、Bランク京都・兵庫・埼玉・広島、Cランク宮城、Dランク青森の10都府県で逆転現象が解消され、北海道(Cランク)のみとなった。生活保護との関連では、自民党の公約に掲げられていた今年8月以降3年がかりで、生活扶助費(日常生活に必要な食費・被服費・光熱費等)を4.8%から最高10%削減するが、これについては、最賃は無関係とされている。215万人の受給者がおり、東京都の場合標準3人世帯で生活保護費として月額約17万2170円が支給され、これに住宅・医療扶助がつくと24万1970円、母子加算も加わると、26万2700円にもなり、税金や社会保険料が免除されるため、この額がそのまま手取り額となる、滅茶苦茶な実態があるから、「準ずる」にはムリがある。
今後の地方最賃審も今のところ悲観的だ。