【主張】実効性ある長時間対策を
厚生労働省が、塩崎恭久大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を設置した(本紙1面参照)。日本再興戦略が「働き過ぎ防止のための取組み強化」を求めていることから、省内幹部を集めて総合的な長時間労働対策を打ち出すとしている。
労働政策審議会労働条件分科会で議論が始まった労働時間規制緩和を横目でみながらの同本部設置といえるが、法的規制を伴わない長時間労働対策の推進を想定しているならバランスの取れた議論とはいえないのではないか。
同本部では、事務局長に労働基準局長を充てたうえ、下部組織に「過重労働等撲滅チーム」や「働き方改革・休暇取得促進チーム」を設置するなど、相当な意気込みは感じられるが、果たして実効性ある長時間労働対策を立案できるかは未知数だ。
例えば、年次有給休暇取得促進対策の現状をみれば明らかだろう。政府主導の下、高い目標を掲げて取得率アップに取り組んできたものの、結果は惨憺たるものとなっている。平成24年の取得率は47.1%で、10年前の取得率を下回ってしまった。目標を立ててそこをめざすのはいいが、結果だけをみると掛け声倒れで歯痒いばかりだ。
労働条件分科会では、日本版ホワイトカラー・エグゼンプションの創設や裁量労働制の適用拡大に向けた規制緩和などを検討中で、これはすべて強行法規である労働基準法の改正によって実行するものである。
一方、同本部は、大臣と厚労省幹部らを構成員としているものの、直接的に新たな法的規制を設定することはできない。意気込みが高くても、実効性の高い長時間労働対策は望めない可能性があり、規制緩和とのバランスに疑問が残る。
同本部では、今年の年末まで時間を掛けて対策を練っていくという。過重労働撲滅、休暇取得促進を本気で推進するなら、何らかの法的対応をも視野に入れた長時間労働対策を打ち出す必要があるのではないか。検討結果を、そう遠くないうちに労働条件分科会に提案し、法改正につなげるよう期待したい。