【主張】再び「政労使」で賃上げを
2015年の春季賃上げへ向けた活動が本格化し始めている。今春の状況を振り返ると、その最大の特徴は、政労使三者が足並みをそろえて対処し、結果的に高水準の賃上げを達成したことにある。とくに、経営側が政府による賃上げ要請に応え、拡大した収益を賃金に振り分けたことが決定的だった。
来春の賃上げ交渉もこの流れを変えることなく、政労使が共通認識を持ち、一体となって賃上げに取り組んでもらいたい。
今春の賃上げ交渉は、その意味で画期的だった。従来まで、政府の意思がどうあれ、賃上げ交渉は労使間の力関係などによって決定されてきた。経営側は、長年にわたって自社の支払い能力に依拠した賃上げを頑なに維持し、結果として低迷を続けた。
しかし、大きく情勢が動いた。経営側は、支払い能力論の原則は堅持するとしながらも、労使交渉の社会的位置付けが従来以上に高まったとみて、業績が好調な企業については、得た収益を設備投資だけでなく、雇用の拡大、賃金の引上げに振り向けるべきであるとする方針を打ち出したのである。
この結果、厚生労働省の集計による主要企業の平均妥結結果は、6711円、2.19%の引上げとなり、15年ぶりの高水準に達した。
日本経済は、ようやくアベノミクスによって浮揚し始めたが、まだ緒に着いたばかりである。好循環が一巡したのは事実としても、それが一過性では国民全体の信任は得られない。高賃上げが実現したものの、実質賃金については1年以上にわたってマイナスが続いており、物価上昇分に追い付いていない実態も浮き彫りである。
好循環を一過性で終わらせないためにも、15年交渉においては、再び政労使協議に基づく今春を上回るような大幅賃上げを実現すべきである。ここに来て経済の先行き不透明感が増し、消費税再増税も先送りとなろう。このまま政権が弱体化し、今後の経済運営に重大な支障が生じては元の木阿弥である。政労使三者がもう一度奮起して、15年交渉に臨んでほしい。