【主張】インターバル制の拡大を
本紙報道(8月10日号6面)によると、今年の労使交渉で、国内旅行業最大手のJTBグループ内9社が「勤務間インターバル規制」の導入で妥結し、7月1日時点ですでにスタートさせたという。
わが国の長労働時間規制はもっぱら時間外割増によるもので、実効性に欠ける面が指摘されている。しかし、勤務間インターバル規制は、労働時間を物理的に制限するものであり、長時間労働抑制への決定打となり得る。今後、制度の普及・拡大を図り、法整備に向けた議論の素地を形成していくべきである。
勤務間インターバル規制は、EU諸国が早くから導入している。1993年の労働時間指令では、24時間につき最低でも11時間の休息時間の設定を義務化している。仮に午後11時まで勤務したとすると、翌朝の午前10時まで勤務が免除される。
わが国においては、情報労連が09年の労使交渉から導入を要求し、現在では複数の企業で実現している。多くはインターバル時間を11時間より短い10時間や8時間とした。
JTBグループ9社が今回導入に踏み切った規制では、インターバル時間を8時間としたのが5社と多いものの、11時間とする企業も2社あった。長時間労働となりがちな広告・イベント関連企業も含んでいるとすれば、高く評価できるだろう。
JTBグループ労連の神吉事務局長は「組合員が生き生きと働ける職場をめざす。そのために個々の自己実現を図る必要がある」とその背景を語っており、ワーク・ライフ・バランスの向上にも期待を寄せている。
わが国の労働時間短縮は、ここにきて停滞気味である。現行の割増賃金規制だけでは、一段高いハードルを乗り越えることができないかもしれない。産業競争力会議の雇用・人材分科会も、働き過ぎ防止に向け、労働時間の量的規制や勤務間インターバル規制の導入を訴えていた。
今国会に上程している労働基準法改正案は、労働時間規制の緩和が主題となっている。次の同法改正では、長労働時間規制の質的な飛躍につながる議論を求めたい。