【主張】賃金増5%と法人税減税をみる

2013.10.14 【主張】
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 先月20日に開かれた「政労使会議」の初会合で前代未聞の珍事が起こった。会合自体も政府と経済界、労働組合の3者が、デフレ脱却に向けた政策を話合うという微妙な目的を持つものだが、席上、安倍首相が「賃上げが景気回復に不可欠」だという認識を示した。賃上げは、労使交渉によって自主的に決定するもので、国が嘴を容れる性格のもではなく、類例をみない。

 階級闘争から労使協調へと交渉もお互いの立場を尊重する方向性に切り替わり、穏やかに推移してきている。馴染みは薄いが、実は今年初めに賃上げを促す減税制度が発足しており、それが発端となったのは間違いなかろう。

 同制度は、平成25年度から3年間の時限措置としているもので「給与や賞与などの年間給与総額を前年度よりも5%増やした企業に対し、給与総額の10%(中小企業20%)の法人税を減税するというもの。一見、大盤振舞いみたいだが、大企業でも半分が黒字だけ、中小企業に至っては、7割が法人税を納付していない赤字企業である。全国の企業260万社のうち、73%が法人税を支払っていない制度の適用除外、という笑話にもならないものだ。

 会議では「企業の収益改善により、賃上げ可能な環境になりつつある」という話題も出た。共同通信の調べによると、大手企業30社が利益のうち「賃上げ」などに回さず、貯め込んだ「内部留保」の総額が今年3月末で77兆6435億円に上ったことなどが判断材料になったようだ。賃上げ、設備投資、リスクマネジメント、その使い道は労使で決めることだ。第三者たる政府が他人の懐具合を探るのはちょっとお下品ではなかろうか。ちなみに厚生労働省の「平成25年民間主要企業賃上げ結果」によると、1.08%であり、その分一時金でカバーしたとしても減税制度には遠く及ばない。前述した5%アップ基準は来年度から3%に引き下げる(安倍首相の2%説も)という。公約実現に必死の構えだが長年の努力で培った労使協調にヒビを入れることだけは、ご免蒙りたい。アベノミクスのめっきが剥げかかっているのか。

 

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平成25年10月14日第2940号2面 掲載
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