【主張】合同労組に十分な配慮を
東京都内の不当労働行為事件に異変が生じている。非正規労働者の「駆け込み寺」とされる合同労組の動きが以前にも増して活発化していることが背景にある。
本紙報道(9月7日号2面)によると、東京都労働委員会が平成26年中に受け付けた不当労働行為新規申立が132件となり、昭和56年以降で最多となった。統計を開始した昭和21年以降では歴代6番目の多さという。
全労働者に占める非正規労働者の割合が約4割となった現在、合同労組がかかわる労使紛争の増勢は避けられない状況にある。企業は、紛争の態様をよく分析して、スムーズな解決に心掛けるか、紛争の未然防止に力を注ぐ必要性に迫られている。
不当労働行為新規申立の実態をみると、8割が団体交渉拒否事案で、前年の7割を大きく上回った。組合側の要求する資料を開示しなかったり、誠実な回答がなされないために紛争となったケースもめだっているという。非正規労働者の紛争に絞ると、解雇・雇止めに関する事案が多数を占めている。
申立の多くが団体交渉拒否や資料不開示という実態から推察すると、「駆け込み訴え」により合同労組から突如として突き付けられた団体交渉要求に戸惑う企業側の姿が浮き彫りとなる。しかも事実上は、個別労働紛争の解決手段として用いられている。企業内労働組合からの要求ならまだしも、まったく面識のない合同労組役員がいきなり現れて一方的要求を突き付けてくれば、身構えざるを得ない企業側の心理も一定程度は理解できる。
しかし、わが国の労働法制では、「複数組合主義」を採用しており、いかなる労働組合も団体交渉権を有していると解釈するのが通説・判例である。たとえば、一企業内に複数組合が併存する場合において、仮に少数組合側であっても独自の団体交渉権が保障されている。地域の合同労組も同様で、企業はいずれの労働組合に対しても誠実な団体交渉に応じる義務がある。
常に法令遵守に努め、付け入るスキを与えないよう心掛けなければならない。