【助成金の解説】特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)/岡 佳伸
障害者、高齢者、母子家庭の母等の就職を支援
特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者や障害者などの就職困難者をハローワーク等の紹介により継続雇用する事業主に対して支給される助成金です。この特定求職者雇用開発助成金には、特定就職困難者コース、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース、就職氷河期世代安定雇用実現コース、成長分野等人材確保・育成コースの5つのコースがあります。
特定就職困難者コースは、高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母、重度障害者等を除く身体・知的障害者、重度障害者等を対象としています。支給額は、対象労働者の類型と企業規模に応じて、60万円から240万円までの範囲で変動します。支給期間は、1年から3年までです。長い歴史のある助成金で幅広く活用されてきました。
受給のポイント
① 求人票を提出してハローワーク等経由の人材紹介を経て雇用する必要があります。紹介を経ないで雇用に至った場合はいかなる場合でも対象にはなりません。また、在職者は原則対象外です。
② ハローワーク等経由の人材紹介の前に雇用予約がある場合は支給対象外です。例えば、既に面接内定している求職者を形式的にハローワーク経由での紹介を受けさせ、採用することは不正受給に当たり厳禁です。
③ ハローワーク等からの人材紹介時に対象者である旨の案内があります。人材紹介時に対象者である旨を開示されずに採用後に気が着いた場合(例えば本人が障害者や母子家庭の母等である旨をハローワークに伝えず、人材紹介時にその旨が分からず、内定後に分かったような場合)は対象になりません。
④ 雇入れに関する助成金のため、雇入れ後の前後6か月間に喪失原因3となる離職者(解雇や退職勧奨による退職)を出していないことや、過去3年間に特定求職者雇用開発助成金の対象になった者を解雇や雇止めをしていたいないこと等様々な要件があります。
⑤ 雇入れ後の雇用形態は無期雇用契約が前提となります。ただし、必ず更新する予定の有期雇用契約であっても助成金の支給対象になります。令和5年10月から有期雇用契約で採用する場合は自動更新の契約であることが必要になりました。
⑥ 6カ月間の期間ごとに支給されますが、その期間中に対象者が自己都合で退職した場合は支給されません(死亡または懲戒解雇で退職した場合は、その期間に応じて支給されます)。
⑦ 労働局から原則支給申請時期に併せて支給申請書も含めた書式の案内があります。
⑧ 特定求職者雇用開発助成金の対象者として受給した労働者が正規社員に転換してキャリアアップ助成金との併給はあり得ますが、無期⇒正規への転換区分となります。
⑨ 雇用調整助成金等との併給は出来ません。
⑩ 雇入日の前日から過去3年以内に、対象事業で働いたことのある人(役員、請負、委任、派遣等を含む)は対象になりません。
⑪ 成長分野の業務に従事した場合や訓練+賃上げを実施した場合に、本コースの1.5倍の助成額を支給する「成長分野等人材確保・育成コース」の対象になる場合があります。
お勧めポイント
対象者をハローワーク等の経由で雇入れることで対象になり、助成金の案内や支給申請書も郵送されるので取り組みやすく支給申請しやすい助成金になります。ただし、求人票と違う条件で採用する場合はトラブルになり、助成金支給対象外になることもあるので、事前にハローワークに相談して下さい。
相談先
各労働局、各ハローワーク
参考タイムスケジュール.支給申請までの流れ
概要、支給額
筆者:岡 佳伸(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表)
大手人材派遣会社などで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。
日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載及びNHKあさイチ出演(2020年12月21日)、キャリアコンサルタント
【webサイトはこちら】
https://oka-sr.jp