【主張】重要性増す非正規の育成
厚生労働省がまとめた雇用政策研究会報告書(本号1面参照)は、増大する非正規労働者の質的向上が急務であることを改めて問い掛けている。非正規労働者を、従来までのように、単に人件費コスト削減や調整弁として扱うと、マクロ的には大きなダメージとなって跳ね返ってくると警鐘を鳴らしている。
今後は、非正規労働者もわが国の大切な人的資源の一員と肝に銘じ、個々の状況に合った能力開発に全力を注ぐべきである。
わが国の雇用者に占める非正規労働者は、とうとう約4割に到達した。振り返ると、バブル経済がはじけた後、日本企業は非正規労働者を急速に拡大していった。バブル崩壊によって、苦境に立った多くの企業は、コスト削減や調整弁として非正規労働者を膨張させたのである。倒産や外資に飲み込まれるのを、座して待つわけにいかない産業界にとって、成果主義導入による効率化とともに避けて通れない道だった。これは誰も非難できない。
しかし、バブル崩壊から20年余りが経過し、今日では景気上昇への期待が高まっている。雇用情勢は着実に改善し、賃金上昇も期待が高まっている。「失われた20年」の間に冷遇され続けてきた非正規労働者の”名誉挽回”の時が迫っているはずだ。
多くの非正規労働者が今後職場で活躍できるか否かは、日本経済全体にとっても極めて重要な問題である。本当に正規雇用を希望している労働者については、できる限りその希望をかなえる。プライベートとの両立を考えて非正規のままで良いとする労働者に対しては、長期を前提とする短時間正社員に引き上げて処遇を改善し、希望に合ったキャリア開発を組んでいく。
雇用政策研は、今後急速に進む人口減少がもたらす負の影響を強く懸念している。人口減少のなかで安定した経済成長を続けていくためには、非正規労働者の能力開発の機会を増やして、総体としての人的資本蓄積に力を入れなければならない。コア人材として基幹化・戦力化を達成している企業も少なくなく模範としたい。