【主張】早速改正派遣法の出番に
大阪労働局は、常用雇用以外の労働者を派遣していた特定労働者派遣事業のF社(大阪市)を労働者派遣法違反で事業停止処分とした(本紙9月14日号3面既報)。厚生労働大臣への届出のみで開業できる特定派遣事業者が、許可が必要な一般労働者派遣事業を行った悪質なケースである。
今通常国会で成立した改正労働者派遣法により一掃される違反形態とみられ、今後は派遣労働者の保護強化につながる可能性が高い。改正法の本領発揮を期待したい。
派遣事業の現状をみると、一般派遣事業者が約1万7000社、特定派遣事業者が5万4000社となっている。18年頃から著しく増加してきたのが特定派遣事業者である。一般派遣事業の許可申請を回避し、届出のみの特定派遣事業として開業する場合が少なくない。背景には、一般派遣事業の許可基準のハードルが高いことが指摘できる。一事業所当たり資産額2000万円などが必要である。
しかし、これには大きな問題をはらんでいる。特定派遣事業で扱えるのは1年以上の常用雇用の派遣労働者に限られる。有期雇用の派遣労働者を派遣できるのは一般派遣事業だけである。この派遣条件を無視し、特定派遣事業であるにもかかわらず有期雇用の派遣労働者を扱う違反が絶えない。
今回、事業停止処分としたF社がまさに典型的。常用雇用以外の労働者である外国人留学生を中心に延べ3300人日にわたり、大規模な派遣を行っていた。
改正派遣法では、届出のみで開業できる特定派遣事業を廃止し、全て厚労大臣による許可制に変更した。許可基準をクリアできる事業者なら、より信頼が増すし、厚労省による事業者の把握、追跡も強化される。ただし、資産要件適用に関しては3年の猶予期間を設けている。
F社の処分事例もそうであったように、違法性の高い特定派遣事業の下で働く派遣労働者の労働環境は、一般派遣事業の派遣労働者より劣悪となる傾向があり、従来から問題視されてきた。改正法による指導を徹底して労働者保護に万全を期したい。