【主張】1%でも評価される”ベア”実績
本紙報道によれば、連合は14春闘でベースアップ要求を5年振りに行う(11月4日付6面参照)。要求率は、平均賃上げ方式でする労組の多くが3~4%引上げとなるもようだ。内訳は定期昇給が約2%、見送られていたベア要求は、過年度物価上昇分+αとして「1%以上」となる。
先月下旬に開かれた中央執行委員会でも大筋で認められており、ほぼこの線に沿った要求となるのは確実。安倍総理の「法人税減税分は、賃上げに」という意向を汲んで、一部大手企業では前向きな姿勢が増えている。もっとも、中小企業のうち約7割は赤字企業で、法人税を納付していない。これに大手赤字企業を加えると、全国の企業約270万社のうち、73%が法人税を納付していないという統計もあり、消費税引上げのパフォーマンス的様相も濃い。
賃上げという安倍総理の要望も複雑である。経団連の「昇給、ベースアップ実施状況調査」によると、昨年1~6月実施分では、調査対象1932社のうち、定昇とベアの区別があると回答した企業は、193社に過ぎず、やっと1割に達した状況である。定昇は賃金制度に基づく労働契約上の約定であり、本来的には必ず実施すべきもの。同調査結果によれば、「定昇実施、ベアなし」の企業が93.5%を占め、経団連会員企業においては、この約束事はほぼ守られているともいえよう。
この結果、「定昇・ベア」共に実施した企業は、4.1%に過ぎず、同調査期間段階では、生活改善のため本来の望むべき賃金カーブの底上げに当たるベアには至らなかったという結論になろう。たとえ1%であっても、ベアが来年実施されなければ総理の思惑は外れることになる。
賃金カーブ維持の定昇は、当然の帰結であり、ベアが実施されるか、それがどのような広がりをみせるかは、日本経済の本当の姿を現す。賃上げが定昇だけに終われば、まだ景気は回復途上という結論となろう。その意味で法人税納付企業だけに終わっても、一定の評価を与えなければならないのは当然だ。とくに消費税増税を控えた来年の賃上げ状況は、大きな意味を持つ。