【主張】若年雇用を脅かす継続雇用制度
法改正の効果がここまで達したのは前代未聞のことではなかろうか。厚生労働省がこのほどまとめた「平成25年高年齢者の雇用状況報告」によると、「希望者全員が65歳以上まで働ける企業」の割合は66.5%(9万5081社)に達し、実に対前年比17.7ポイント増となった。
厚労省では、平成18年から毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況を集計(今年の対象企業約14万3000社)している。このような好結果となったのは、今年4月1日から施行された改正高年齢者雇用安定法が背景にあるのは、間違いないところ。
同法では、厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢の繰上げに連動して、4段階の経過措置(25年4月1日~28年3月31日まで61歳、以下3年ごとに1歳ずつ繰上げ37年3月31日まで64歳)を設けており、37年4月1日から65歳にすれば、改正法をクリアすることになっている。
にもかかわらず、施行後一気に「65歳以上」にまで引き上げたのは、まさに改正法の波及効果である。同集計は、従業員31~300人規模を中小企業、301人以上を大企業として括っているが、制度改正の影響は、中小企業が前年比16.5ポイント増だったのに対し、大企業は同24.6ポイント増と昨年に比べて倍増している。要因は種々考えられる。すなわち、ゆとり教育によって、足腰の弱くなった若年者より、自社の伝統を受け継ぐ高年者の方が貢献度において勝ることが、第一に挙げられよう。賃金は60歳定年時の6割程度に抑えられても積極的に継続雇用を選択した点も大きな要因と考えられる。
これは半面で、大きな足かせとなった。家庭は親と子で構成されており、教育投資が終わり、これから回収に向かう子の就職率低下に通じるからだ。企業からみればメリットの大きい制度改正だが、個々の家庭レベルからみると割に合わない改悪ともいえそう。封建制度下の家督相続のように親から子へとバトンタッチする新たな仕組みの創設もあり得るかも知れない。事実、中小企業では同族経営が当たり前になっている。笑って済まされる事態ではない。