【主張】最賃支援の大風呂敷に不安あり
厚生労働省は、中小企業庁と連携して「最低賃金の引上げに向けた中小企業・小規模事業場への支援施策マニュアル」を作成した(本紙12月2日号1面)。記事が「網羅的」と紹介しているように、支援施策は、直接的な助成金制度の紹介を始め、販路拡大、新規事業分野への進出、技術力の強化、人材育成・従業員のキャリアアップ、高齢者の雇用環境整備、相談・融資制度等々、まさに両主務官庁の知恵を結集したもので、期待できそうな内容である。
例えば、業務改善助成金は、最賃引上げの影響が大きいと思われる地域別最賃が720円以下の37道県を対象とするもので、①4年以内に800円に引き上げる賃金計画を作成し、1年当たりの時間給が40円以上となる引上げを実施②労働者の意見を聴取の上、賃金制度の整備、就業規則の作成・改正、労働能率の増進に資する設備・器具の導入、研修等の実施を条件に経費の2分の1を国の予算内で助成(上限100万円、下限5万円)するもの。
その国の予算計画は、23年度50.0億円、24年度35.2億円、25年度26.5億円そして要望として26年度44.2億円が明記されているが、一見して壮大な構想の割にはみみっちい。
政府は平成22年に政労使で構成した「雇用戦略対話」合意によって、最賃引上げの目標とし「できるだけ早い時期に全国平均800円を確保し、景気状況を配慮しつつ全国平均1000円をめざす」を掲げ、実現は平成32年としている。これを達成するには実質2%、名目3%を上回る経済成長が前提条件である。今年、実質2%増を達成するため、日本銀行は大幅な金融緩和を実施しているが、これとて五分五分の見通しだ。
支援施策と戦略対話の整合性はさっぱり分からない。故にどちらも「大風呂敷」とみるのが、ふつうではないか。
スタート前から難癖をつけて申し訳ないが、単純に計算すると、720円と800円の格差は80円。4年間で平均20円ずつ引き上げなければならない。今年の全国平均15円アップもアベノミクスが効いた感があり、前途多難だ。