【主張】労働規制改革はこれから
経団連がまとめた「規制改革の今後の進め方に関する意見」によると、現政権の規制改革に対する姿勢を高く評価しながらも、未だ「途半ば」であり、今後も勢いを落とさず一層の取組みを推進すべきであると檄を飛ばしている。
本紙もほぼ同感だが、労働規制に関していえば、近年実現してきた改革あるいは近々に実現を見込んでいる改革が、はたして日本の社会経済の発展にとってどれほどのプラス効果があるかは疑問が残る。より広範囲なインパクトが期待できる解雇法制の見直しなどが実現できなければ、本当の労働規制改革が成し遂げられたとはいえない。
「岩盤規制」といわれる労働規制改革は、現政権主導の下での各種法改正により前進していることは確かだ。かつて労働者保護を理由として規制改革にブレーキを掛けてきた中央官僚が、政権側の要望を一定程度受け入れ始め、これに応じるようになったことが背景にあろう。規制改革の前進は、裏方である中央官僚が政権を支持し、後押ししていることが大きい。
しかし、今回、社会的に大きな注目を浴びた労働者派遣法改正による派遣期間制限の見直しや労働基準法改正による高度プロフェッショナル制度の創設(予定)が、「岩盤規制」を打ち砕くほどの内容かは慎重に判断する必要がある。この改正に関係する労働者は、いずれも全労働者の数パーセントでしかなく、わが国の労働市場はこれによってビクともしない。どれほどの労働生産性向上に寄与するかも検証が必要である。実際には、労働規制改革の象徴的意味しか持たないだろう。
現政権は「岩盤規制」を全て打ち砕くと宣言している。それならば、全労働者にかかわる規制や制度を全面的に見直して、労働者保護強化と大胆な改革を並行して進めていくぐらいの意気込みが欲しい。
具体的には、金銭解決を含む解雇法制の見直しや就業規則の不利益変更ルールの明確化、外国人労働者の受入れ拡大などが挙げられる。ただ労働規制改革は、政労使の議論を経なければならず容易ではないことは確かだ。政権のリーダーシップが問われよう。