【主張】非正規を減少トレンドに
厚生労働省は、本省内に塩崎厚労相をトップとする正社員転換・待遇改善実現本部を設置し、早速、緊急対策に乗り出したという。今後、複数の数値目標を設定し、これに本腰を入れて取り組み、確実に達成していく必要がある。決して外部へのアピールやアリバイづくりに終わらせてはならない。
現在の雇用情勢をみると、非正規の正社員化・待遇改善にとって絶好の機会が到来している。今年8月までの雇用統計によると、完全失業率は3.4%で、ほぼ20年前の水準に低下している。有効求人倍率は1.23倍で、やはり23年ぶりの高水準である。有効求人倍率は、平成21年8月の過去最低0.42倍からV字回復を果たした。
正社員に限定した有効求人倍率も改善傾向が続き、0.76倍にまで上昇した。この数値は、集計を開始した16年11月以降で最高の水準という。
こうなれば当然、製造業、非製造業にかかわらず、今後も人手不足感がさらに強まる見通しだ。現金給与総額も緩やかな増加傾向が続き、実質賃金はとうとう前年同月比プラスに転換した。2年3カ月ぶりのことである。
雇用労働者の約4割にまで増加した非正規の正社員転換・待遇改善を図るためにこの機を逃してはならない。今後、数年にわたって一気呵成に正社員転換を図り、非正規の減少トレンドを形成すべきである。もちろん正社員といっても多様な形態があり、本人の希望や企業が実際に提供可能な複数のコースを設ければそれほど大きな負担とはならないはずだ。
雇用安定措置の義務化などを新たに明記した改正労働者派遣法の施行に加え、約2年半後に迫っている労働契約法の「無期契約転換ルール」の適用開始も正社員化にとって力となる。
折しも現政権は、「一億総活躍社会」の実現に取り組む方針を打ち出した。非正規を減少トレンドに持ち込むことによって、わが国総体としての能力開発、人的資本蓄積が徐々に進み、若者の活躍の場も拡大していくはずである。同本部の実行力、実現力に期待を寄せたい。