市議会改革に挑戦 社労士目線を活かし/TOMO社会保険労務士事務所 代表 岡田 智佳
私が社会保険労務士の資格を取得したのは、2006年。その後、当時、世間を騒がせていた「消えた年金」の調査のため総務省に設置された「年金記録確認東京地方第三者委員会」の専門調査員を務めたのをきっかけに政治に関心を持ち、2015年に柏市議会議員となった。
柏市議会では今年6月、「柏市議会ハラスメント防止条例」を可決した。市議会では条例制定のために、事前に全職員に対し、ハラスメントアンケートを実施した。柏市議会議員からハラスメントを受けたことがあると回答した職員が157人、ハラスメントを受けているのを見たことがあると答えた職員は316人と、不名誉な実態が明らかになり、マスコミなどで大きく取り上げられた。
柏市議会も多くの議会と同様、これまでハラスメントに対するルールが一切なく、この間、企業などが懸命に取り組んできた「ハラスメント防止対策の強化」に対しても、何ら対応してこなかった。
事実、条例案制定の際に議場で行われた討論の中では、「もっと研修の機会を持って、ハラスメントを理解してから、条例を制定すべき」「行為を見た人の議長への報告義務は、密告と受け取られる恐れがある」といった反対意見も出された。加えて、「無所属議員と、会派所属議員との政務活動費の格差も、ハラスメントに当たる」など、論点のずれた意見も出され、結局35人中、5人の議員が反対したなかで条例が制定された。
条例では、対象となるハラスメントをパワハラ・セクハラ・出産や育児に関するハラスメントの3つに限定したうえで、具体的な防止策として、議長に対し、行為者の氏名公表や相談窓口の設置を義務付けた。さらに、議員は、行為者を見た際の行為者への指摘と、議長への報告義務も負うなど、かなり踏み込んだ内容が盛り込まれた。短期間での準備で、議論が十分ではないといった指摘もあったが、私は、高い水準で出来上がったと評価している。
しかし、法律や条例は、作ることが最終目的ではない。いかに実態に合わせて運用していくか。重要なのはこれからである。
私は以前、消費者庁で公益通報者保護法の周知の仕事をしたが、その際にも感じたのは、通報窓口や相談窓口の重要性だ。同条例が絵に描いた餅とならないよう、そして、市職員と議員が、市民のため効率的に仕事を進めていくためにも、議会としてしっかり自浄作用を働かせていけるように、社会保険労務士目線で、引き続き議会改革に取り組んでいきたい。
TOMO社会保険労務士事務所 代表 岡田 智佳【千葉】
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