【書方箋 この本、効キマス 濱口 桂一郎選集(2023年上半期)】『統治不能社会』『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』『反逆の神話』ほか
労働新聞で好評連載中の書評欄『書方箋――この本、効キマス』から、2023年の上半期に公開した濱口桂一郎さんご執筆のコラムをまとめてご紹介します。
『統治不能社会』グレゴワール・シャマユー著
半世紀前の1975年に、日米欧三極委員会は『民主主義の統治能力』(サイマル出版会)という報告書を刊行した。ガバナビリティとは統治のしやすさ、裏返せばしにくさ(アンガバナビリティ)が問題だった。…
『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』エマニュエル・トッド 著
専制主義は古臭く、民主主義は新しい、とみんな思い込んでいるけれども、それは間違いだ。大家族制は古臭く、核家族は新しい、との思い込み、それも間違いだ。実は一番原始的なのが民主主義であり、核家族なのだ。というのが、この上下併せて700ページ近い大著の主張だ。…
『反逆の神話』ジョセフ・ヒース&アンドルー・ポター 著
原題は「The Rebel Sell」。これを邦訳副題は「反体制はカネになる」と訳した。ターゲットはカウンターカルチャー。一言でいえば文化左翼で、反官僚、反学校、反科学、極端な環境主義などによって特徴付けられる。…
『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』渡邊 大門 著
戦国時代といえば、幕末と並んでNHK大河ドラマの金城湯池だ。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑をはじめ、武田信玄、上杉謙信など英雄豪傑がこれでもかと活躍し、血湧き肉躍る華麗なる時代というのが一般認識だろう。…
『「社会正義」はいつも正しい』ヘレン・ブラックローズ&ジェームズ・リンゼイ著
近年何かと騒がしいポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)の源流から今日の広がりに至る展開をこの1冊で理解できる。そして、訳者が皮肉って付けたこの邦題が、版元の早川書房の陳謝によって自己実現してしまうという見事なオチまで付いた。…
『一八世紀の秘密外交史 ロシア専制の起源』 カール・マルクス 著
一昨年から毎月、書籍を紹介してきたが、今回の著者は多分一番有名な人だろう。そう、正真正銘あの髭もじゃのマルクスである。ただし、全50巻を超える浩瀚なマルクス・エンゲルス全集にも収録されていない稀覯論文である。…
2023年下半期分は、こちら。
選者:JIL-PT 労働政策研究所長 濱口 桂一郎(はまぐち けいいちろう)
83年労働省入省。08年に労働政策研究・研修機構へ移り、17年から現職。