【書方箋 この本、効キマス 髙橋 秀実選集(2023年上半期)】『ヴァギナ・モノローグ』『ミクロコスモス―生命と進化』『一九八四年』ほか
労働新聞で好評連載中の書評欄『書方箋――この本、効キマス』から、2023年の上半期に公開した髙橋秀実さんご執筆のコラムをまとめてご紹介します。
『ヴァギナ・モノローグ』イヴ・エンスラー 著
テレビのスポーツ中継などを観ていると、近頃の若者たちは、決まってカメラに向かってハートマークをつくる。かつては指を2本立ててピースサインを出していたような気がするが、今は両掌を丸めてハートマーク。
『ミクロコスモス―生命と進化』リン・マルグリス、ドリオン・セーガン著
「適者生存」「自然淘汰」「弱肉強食」……。簡潔な四字熟語のせいか、これらは生物界の掟、ひいては市場の原理としてもすっかり定着している。
『一九八四年』ジョージ・オーウェル 著
戦争はもうやめてください。ロシアのプーチン大統領に私は訴えたい。砲撃もいい加減にしてくれ、と。ただでさえ私たち人類は自然災害や病気、さらには生活苦に苛まれているのに、なぜそこにミサイルを撃ち込むのか。
『無限と連続』遠山 啓 著
認知症を診断するテスト(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)の中にこんな問題がある。「100引く7は?」計算能力をチェックするのだが、アルツハイマー型認知症だった父は、いきなりこう問い返した。
『漢字の字形』落合 淳思 著
「生成AI」やら「チャットGPT」やら、テクノロジーの進化は目まぐるしく、とてもついていけません。などと嘆いてもまったく共感を得られないので、私はスマホ教室に通うことにした。
『「がん」はなぜできるのか』国立がん研究センター 編
個性を尊重する、とよく言われるが、実際に人と違うことをすると「協調性がない」と非難されたりする。自由こそが理想のはずなのに、自由に振る舞うと身勝手だと顰蹙を買う。
2023年下半期は、こちら。
選者:ノンフィクション作家 髙橋 秀実(たかはし ひでみね)
ノンフィクション作家。1961年、横浜市生まれ。テレビ番組制作会社のADを経て現職。主な著書に『はい、泳げません』、『ご先祖様はどちら様』、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』など。最新刊に『おやじはニーチェ 認知症の父と過ごした436日』(新潮社)。