【今週の労務書―2023年1~3月掲載記事を振り返る】
『労働新聞』で掲載している書評欄『労務書』から、2023年1~3月に掲載した書評をまとめてご紹介します。
『これ1冊でわかる 中小企業のHRテック入門』
副題は「わが社でもできる! 導入から運用まで」。「採用」「定着」「人事評価」に関する業務を中心に、IT化の要諦を詳述している。初めて評価制度を導入する場合には、まずはアナログな仕組みを構築すべきとした。
『昇給管理の考え方とその進め方』
日本の労働者の賃金減少が著しい。著者はこの原因を、十分な昇給が行われてこなかったからと説き、「賃金カーブ」を意識した昇給管理の重要性を訴えている。
『シニアと職場をつなぐ ジョブ・クラフティングの実践』
ジョブ・クラフティングとは、従業員が主体的に仕事の範囲や人間関係を変化させることを意味する概念である。組織が設計した職務を従業員が柔軟に変えていくことで、企業の変化対応力を高めるといった効果が期待されている。
『メンタルヘルス不調による休職・復職の実務と規程』
副題は「試し勤務を紛争予防策として活用するために」。精神疾患による欠勤・休職・復職の実務対応を解説する。とくにトラブルの生じやすい復職段階で、実務担当者が適切に復職判断をできるよう、試し勤務制度の活用を促し、制度の設計から運用まで詳述している。
『科学的人事の実践と進化 人事DXを超えた経営戦略としての人材活用』
人材のスキルや経験年数などのデータを活用する“科学的人事”を解説する本書。業界別や人事施策別にデータの活用方法の事例を紹介している。たとえば、小売・流通・サービス業の事例では、離職率の高さへの対策として、スマートフォンを利用した意識調査システムを導入している。
『パワハラ上司を科学する』
パワーハラスメントを起こす上司について、著者や国内外の豊富な調査結果などを用い、加害者の持つ特性やリーダーシップスタイルなどを解説した。リーダーシップに注目すると、組織の利益を考えず自身のことしか考えていない脱線型や、考え方などを押し付ける専制型だけでなく、ハラスメントを起こさないよう部下とかかわりを持とうとしない放任型も、部下がパワハラと感じやすくなるという。
『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』
本書では、社員間の「関係性」に着目して、どんなケースでモチベーションが下がるかを分析している。管理職として、部下やチームメンバーがやる気を失わずに高いパフォーマンスを出すには、何に取り組めば良いのかを示す。
『メンタルヘルスの諸問題と企業実務』
精神障害に関する労災請求件数が増加を続け、支給決定件数も増加傾向にあるなど、従業員のメンタルヘルス不調をめぐる問題は年々深刻さが増している。本書はメンタルヘルスの諸問題について、リスクの発生後ではなく、リスクを回避するために、企業としてあらかじめどのような対応が必要になるかを解説した。
『採用がうまくいく会社がやっていること』
対象を社員100人までの中小企業に絞り、今すぐできる採用のノウハウを紹介。「多くが中途採用」、「専任の担当者がいない」などの実情に沿い、募集前の職場環境整備から入社後の定着支援までのコツを示す。
『鬼滅の刃から学べ!チームを幸せに導くリーダーのあり方』
「最終ボス(鬼舞辻無惨)を倒す」ことは、仕事における「組織目標の達成」――本書は、吾峠呼世晴作『鬼滅の刃』(集英社)の登場人物から、ビジネスで魅力的なリーダーになるための方法を解説する。
『判例から探る不利益変更の留意点(第2版)』
平成26年の第1版以来初めての改版である本書では、雇用環境に大きな変化を与えた働き方改革関連法、同一労働同一賃金、コロナ禍の労働問題に関する解説を新たに加えているコロナ禍で発生している問題としては、シフト制を採用する会社での労働時間の激減について触れた。