【主張】最賃増はリスキル促さず

2023.08.24 【主張】
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 首都圏の高卒求人初任給が軒並み20万円台に達した。東京、神奈川の高校の協力を得て、来年3月卒の求人票を集計した本紙調査の結果である(=関連記事)。技術・技能系の全体平均が20万107円となったのをはじめ、営業系(20.7万円)、ドライバー職(20.6万円)、調理員(20.5万円)、販売・接客(20.4万円)などでも20万円を超えている。

 賃上げが停滞してきたなかでも、学卒初任給に限っては近年、ジリジリと上昇を続けてきた。20年前は首都圏で20万円強といえば大卒の水準で、高卒はせいぜい17万円台だった。この間に高卒初任給は3万円以上伸びたことになるが、一方でフルタイム労働者全体の所定内給与をみると、賃金構造基本統計調査では約1万円伸びたに過ぎない(2002年30万2600円→22年31万1800円)。短時間労働者を含む毎月勤労統計調査に至っては、賃金指数は2%以上低下している(02年103.7→22年101.4)。人手不足なのに賃金が伸びないなどといわれるが、その指摘は一面の事実しか言い当てていない。

 中央最低賃金審議会は7月28日、今年度の地域別最賃の引上げ目安を39~41円と答申した。昨年の最賃改定後の物価上昇を試算し、4.3%の引上げ率を基準にしている。目安どおりなら全国加重平均は1002円に達し、東京と神奈川では1100円を超える(ともに41円で答申済み)。仮に1日8時間×稼働日22日=月176時間を前提にすれば、どんな仕事にも19万円台半ばの月給を払わざるを得ない。二大地域においては今後、法定最賃の動向が高卒初任給の水準に“直結”していくことになるのだろう。

 「育成が欠かせない求職者」の賃上げ機能ばかりが強化されていく現状は、果たしてリスキリング推進をめざす「三位一体の労働市場改革」の趣旨に適うのか。かつては終身雇用が前提だったからこそOJTに腐心する価値も高かったが、今や「指導する人材の不足」を訴える企業は全体の6割に上る(能力開発基本調査)。長期勤続してくれる若手だけに育成投資したいと望む企業を、責められない。

令和5年8月28日第3414号2面 掲載
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