【主張】安易な離職防ぐ仕組みに
厚生労働省は9月7日、労働政策審議会の雇用保険部会を開き、雇用保険制度見直しに向けた議論を開始した。基本手当の給付制限の見直しや、短時間労働者への適用拡大、教育訓練給付の拡充などが主な論点となる。
そのうち給付制限の見直しは、自己都合で離職した人を対象に、基本手当を受給するまでに要する期間を短縮するもの。今年6月に閣議決定した骨太方針において、原則2カ月間となっている給付制限の緩和を掲げていた。だが、給付制限の撤廃は安易な離職を招きかねないとの指摘もあり、慎重な議論が必要だ。
失業時の基本手当については、会社都合で離職した場合は求職申込みから7日間の「待期」を経れば受給できるのに対し、自己都合離職者にはさらに2~3カ月間は受給できないといった給付制限を設けている。
骨太の方針では、労働移動の円滑化を実現するため、受給までの期間に関する要件を緩和する方向で制度設計を行うことを明記した。具体的には、基本手当の申請前にリスキリングに取り組んでいた場合について、会社都合離職者と同じ扱いにすることを例示している。
自己都合離職者に対する諸外国の対応をみると、アメリカやフランスでは一般的に失業給付の対象とならず、イギリスやドイツなどでも給付制限を設けるなど、不支給または給付制限を適用している国が多い。このため、厚労省が設置した雇用保険制度研究会が今年5月にまとめた中間整理では、「給付制限を撤廃することには慎重であるべき」との指摘が記載された。また、給付制限を短縮した際の影響として、「転職しやすい労働市場が整っていない場合には単に失業者が増えるだけになりかねない」との懸念も示している。
7日の雇用保険部会では、基本手当の受給を目的とした離職を防止するといった給付制限の趣旨を踏まえ、一部の委員から「給付制限の維持が必要」との声も上がった。
見直しに当たっては、受給目的の安易な離職を防ぐための制度設計に向け、慎重な検討を期待したい。