健康経営で人間性尊重 「理念」表明して施策示す/有限会社人事・労務 代表取締役 矢萩 大輔

2023.09.24 【社労士プラザ】
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有限会社人事・労務 代表取締役 矢萩 大輔 氏

 日々、顧問先企業や社員の皆さんと接するなかで感じるのは、コロナ禍を経て、働き方、そして生活そのものの常識が大きく変わった、という点である。

 人々は時間と場所にとらわれない生活を送れるようになった。その結果、人生の意味や目的について考える機会が増えると同時に、将来のあり方に疑問を持つ人が増え、コロナ禍で不自由を強いられるなかで、仕事とは、働くとは、会社とは何かを根底から省みる、そんな期間を体験してきたのではないだろうか。

 いまは、経済的価値だけでなく社会的価値も求められる時代。SDGsの目標8に「働きがいも経済成長も」とあるように、同時に取り組んでいく持続可能な社会の段階に入っている。そして「健康経営」に焦点を当てると、企業としての持続可能経営の視点からだけでなく、働く個々の人生の豊かさを願いながら社員をみる視点が大切なのではないだろうか。

 健康経営は、法的な義務やトレンドを踏まえて何となく取り入れている段階から脱却することが重要だ。心身の健康推進施策に留まらず、多様性が増す社会のなかで、職場や日常で埋もれてしまいがちな個を大切にした“人間性尊重の健康経営”を考えていく必要があるだろう。

 しかし、取組みを開始するうえで、いきなり施策を検討して迷走状態になり、形だけの取組みに終わるケースが多々見受けられる。健康経営における姿勢やビジョンを「健康経営宣言」として言語化したり、ロードマップを描いた上で具体的な施策を社内で示す、というプロセスが大切だ。たとえば、会社視点・個人視点の両面から健康経営の価値基準を掲げてみてはどうだろうか。参考に、私が考える「健康経営の取組み4つの価値基準」を挙げたいと思う。

 ① 効率や正解を求める姿勢から、創発・探究心へ(会社視点)
 ② 言われたらやる受け身な姿勢から、場からの声・場からわきあがる意志へ(会社視点)
 ③ マズローの欲求5段階説を踏まえ、安心安全の欲求・親和的欲求・承認の欲求といわれる“欠乏欲求”から、自己実現・自己超越欲求という“成長欲求”を、働くを通して人生に求める、というあり方への変容を(個人の視点)
 ④ ただお金を稼ぐための会社という見方から、くらし・身近な人・地域への貢献を通してわきあがる幸福というローカルな視点へ(個人視点)

 ぜひ今から、社員との対話の場を持ち、具体的な施策を出し合って取り組んでみてはいかがだろうか。

有限会社人事・労務 代表取締役 矢萩 大輔【東京】

【公式webサイトはこちら】
https://www.jinji-roumu.com/

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令和5年9月25日第3418号10面 掲載
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