【主張】監督指導体制強化が課題
厚生労働省の「新しい時代の働き方に関する研究会」は報告書をまとめ、今後の労働基準法制や監督行政の課題・対応について提言した。
働き方の個別化・多様化を背景に、労働基準監督官が対応すべき事案の複雑化が進んでいるうえ、労働者数当たりの監督官の数が少ないといった問題を指摘。AI・デジタル技術の積極的な活用などを通じて、効果的・効率的な監督指導体制の構築を訴えている。働き方の多様化に応じた丁寧な監督指導を行えるよう、監督手法の充実による効率化とともに、監督官の増員を通じた体制強化も進めてもらいたい。
報告書では、法違反が疑われる事業場に対して確実に監督指導を行い、あるべき労働条件の実現に誘導していくためには、監督指導業務の効率化や、客観的で公平性を持った効果的な履行確保が不可欠とした。具体的な仕組みとして、監督指導におけるAI・デジタル技術の積極的な活用や、労働基準監督署に集積した各事業場の情報および過去の指導記録のさらなる活用などを挙げている。
リモートワークの普及を踏まえた指導のあり方も検討課題とした。労基法については、労基署が管内の事業場を物理的に把握し、事業場単位で同法を遵守させる仕組みになっているが、昨今は必ずしも労働者が事業場内で働かないなど、事業場への臨検を前提とした指導になじまないケースが増加。物理的な場所としての事業場のみに依拠しない指導手法を求めている。
厚労省では近年、働き方改革の推進などを目的に監督官を増員している。平成28年度に2923人だった定員数は、令和3年度に3042人にまで増加。4年度には、労基署が同一労働同一賃金の徹底に向けた事実確認に乗り出すに当たって、第2次補正予算により52人増員した。
ただ、日本全体の労働者数が約6000万人に上ることを考えると、十分とは言えない。来年4月からは建設業やドライバーなどでも時間外労働の上限規制がスタートする。監督手法の効率化と同時に、引き続き監督官の増員による体制の強化を望む。