【ひのみやぐら】愚直に安全のルールを伝える
安全のルール伝える――。今号特集Ⅰの見出しの一部だが、この文字を見たときにかつて小職の先輩が取材した記事を思い出した。古い話で恐縮だが、2011年1月15日号の「トップ&キーマンいんたびゅう」で大和ハウス工業㈱の西村達志技術本部長(当時)にインタビューをしたときに話していただいた労災防止の要点だ。「安全というのは仕組みだけでなく、どれだけ人の意識をそこに向けられるかがポイントになります。つまり、いかに人の気持ちに火をつけ、動かすかです。そうして皆が順守すべき事項、果たすべき役割を決めたなら、当たり前のことを愚直に守って実践していく――。それが実は、災害に対する最大の攻撃にもなるわけでして、凡事徹底で安全の作りこみができるようになることこそが大切なんです」との文面が印象に残っている。
当たり前にある職場のルールを当然のように労働者に守らせるというのは一見簡単のように聞こえるが、実はかなりハードルが高いことであるのは安全衛生担当者なら日常のなかで、感じていることだろう。近年、発生している災害の多くは不安全な行動によるもので、とりわけヒューマンエラーが目立っている。同じ作業の繰り返しで慣れや危険軽視が原因で起きるエラー、面倒なことはしたくないとつい楽な方法や行動をとってしまうエラーなどが後を絶たない。
こうした人に起因する労働災害には、「いかに人の気持ちに火をつけるか」が大切であり、管理監督者さらには経営トップ自らが洞察力を高めて、率先実行しながら指導することが求められる。月並みな言い方かもしれないが、作業方法の標準化を進めて、教育や訓練を根気よく行い日々の実践に結びつけていくしかない。安全に特効薬はないといわれるゆえんだ。
もう一つ所見を言わせていただければ、経営トップや管理監督者は、常に安全を最優先する風土をつくり、安全文化として定着させることも重要だ。日ごろから安全に配慮して作業するよう労働者への意識付けが欠かせない。
安全のルールを伝えるには、愚直に真摯な態度を持って根気強く教えていくのが、結局、近道ではなかろうか。