【主張】労働改革本番の年明ける
労働規制改革の本番となる平成28年が幕を開けた。企業の経常利益は過去最高水準に達し、春季賃上げは前年を上回る伸びを続け、有効求人倍率も23年ぶりの水準に戻っている。日本経済は、念願だったデフレ脱却の一歩手前までたどり着いた。今年は、労働規制改革を大きく前進させ、その背中をひと押しする好機と捉えたい。目標達成には、政労使が一体となって取り組む必要がある。
難関は、労働基準法改正だろう。長時間労働を是正する一方で、労働者が創造的能力を発揮し効率的に働くことができる環境整備に向けた重要な規制改革が盛り込まれている。フレックスタイム制、企画業務型裁量労働制に加え、高度プロフェッショナル制度の創設などだ。昨年の通常国会では、実質審議が一切行われなかったが、今通常国会で必ず成立させるべきである。
より広範囲な影響が予想される解雇の金銭救済制度の具体化も注目される。今年中には、法案のベースとなる考え方、制度設計案をまとめ、世に問うべきであり、検討を加速していくよう求めたい。同制度の創設は、長年の懸案となっており、できる限り早く欧州諸国のレベルに近付けていきたい。違法解雇が横行している中小零細規模企業の労働者にとって一つの救済手段となり得るかもしれない。
労働規制改革と並行して実現しなければならないのが、労働生産性の飛躍的向上であろう。企業は、今年こそ設備投資、研究開発投資とともに、人材への積極果敢な投資を実行し、収益力のアップに真剣に取り組んでもらいたい。未来の日本経済社会を形作る基礎となっていこう。
労使双方は、過去から続く対立的構図をできる限り薄め、日本のあるべき姿に向かってともに一致し、大局的に行動すべきである。政労使会議のスタートが、春季賃上げ交渉における労使対立を大きく緩和したのが模範である。
日本は、少子高齢化による体力の消耗、グローバル競争の激化により窮地に立ちつつあり、労働規制改革と生産性向上を遅らせることはできない。国内で大きな矛盾を抱えている余裕はない。