【主張】監理体制の強化欠かせず
外国人技能実習制度と特定技能制度の見直しに向けた政府の有識者会議での議論が大詰めを迎えている。10月18日には技能実習に代わる新制度の創設を盛り込んだ最終報告書のたたき台を公表済みで、近く報告書をまとめる。
たたき台では、人材確保と人材育成を目的とする新制度の創設を提言。新制度では外国人本人の意向による転籍を認めるほか、外国人の受入れが適正に行われるよう、受入れの監理を担う監理団体の許可要件などを厳格化する方針を打ち出している。
厚生労働省がまとめた監督指導結果をみると、実習生を受け入れている事業場での違法な長時間労働や賃金不払い残業が依然として後を絶たない。監理団体による受入れ企業への指導・監査の確実な実施に向けて、適切な監理体制を整備できていない団体を排除できる仕組みの導入を期待したい。
新たな制度の適切な運用に向けて、最終報告書のたたき台では外国人技能実習機構や監理団体の体制強化を提言した。監理団体については、受入れ企業からの独立性、中立性を確保する観点から、受入れ企業と密接な関係にある役職員には監理への関与を制限するほか、外部者による監視を強化する方向だ。
労働政策研究・研修機構が監理団体に実施した調査によると、監理団体の役員が代表などを務める受入れ企業に対し、実習監理を行ったことがある団体は約6割と少なくない。企業に対する監査を実効性のあるものにするためには、役員兼務者の影響力が監査に確実に及ばないようにするための仕組みづくりが不可欠だろう。
たたき台では監理団体の許可に当たり、受入れ企業数に応じた職員の配置、財政基盤や外国語による相談体制の確保に関する要件を設定することも求めた。前述の調査によると、常勤職員1人当たりの受入れ企業数が6社未満の団体が7割を占める一方、10社以上の団体も1割近く存在する。新制度では、受入れ企業での労働実態に監理団体の目が行き届くようにするためにも、職員数に適切な要件を設定してもらいたい。