【主張】インターバルの再評価を
勤務間インターバル制度の導入が進まない。毎年1月1日現在の状況を聞いている厚生労働省・就労条件総合調査によれば、導入企業の割合は6.0%に留まった。前年結果の5.8%に比べ、わずか0.2ポイントしか伸びていない(=関連記事)。
終業から次の始業までに一定以上の休息時間を確保する同制度は、長時間労働を是正する手立てとして注目を集めた。まずは休息を確保すべしという発想の転換は、大手製造業を中心に受け入れられていった。その後、2019年4月には事業主の努力義務となり、すでに4年半が経過している。
過労死等防止対策大綱では、「2025年までに導入率15%以上」との目標が掲げられているが、残る期間での達成は容易ではないだろう。同調査では8割を超える企業が、「導入予定はなく検討もしていない」と答えている。むしろ努力義務になる以前の方が、労使の間で交渉が進んでいた印象は強い。
導入が停滞した背景に、新型コロナウイルス感染症の影響があるのは否定できない。努力義務化から1年を待たずして感染が拡大し、「5類感染症」へと位置付けが変わったのは今年5月のこと。その間に多くの労働者はテレワークを経験し、仕事と生活を分ける垣根は低くなった。
コアタイムを設けないフルフレックスタイム制を採用する企業が増え、在宅勤務時の「中抜け」を認めているケースも少なくない。グローバルに事業を展開する企業では、海外拠点とのミーティングを早朝や夜間にリモートでこなすことも珍しくなくなった。インターバル規制が足枷のように感じられたとしても、致し方ない面がある。
同調査では、「導入予定はなく検討もしていない理由(複数回答)」についても尋ねており、最も多かったのは「超過勤務の機会が少なく、必要性を感じないため」51.9%だった。ただし、勤務時間に対する個人の裁量度の広がりは、逆説的に管理の必要性も高めていくはず。明らかに不要な長時間残業やメンタルヘルス不調を防ぐ手段として、インターバル規制の再評価にも期待したい。