【助成金の解説】キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)/岡 佳伸
年収の壁を突破
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)は、厚生労働省が令和5年10月から新設した制度です。この制度は、短時間労働者が社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入することで手取り収入が減少することを防ぐために、事業主が労働者の収入を増加させる取り組みを行った場合に、労働者1人あたり最大50万円を助成するものです。適用事業主や適用事業所単位の上限人数はありません。
この制度の目的は、短時間労働者のキャリアアップを促進し、年収106万円の壁を解消することです。年収106万円の壁とは、短時間労働者が社会保険に加入すると、社会保険料や所得税などの負担が増えるために、手取り収入が減少する現象を指します。この現象は、短時間労働者の就業意欲や雇用安定に悪影響を及ぼしています。
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)を活用するためには、事業主は以下の流れで手続きをすることが必要です。
1.キャリアアップ計画書を作成し、管轄の都道府県労働局長に提出します。キャリアアップ計画書は、適用メニューに丸をつけた後で、社会保険適用時処遇改善コース取組内容(手当等支給や労働時間延長、又は併用メニュー等)をチェックボックスで選択します。複数の取組を通常行うと考えられるので全てのメニューに丸及びチェックボックスを選択してください。実施予定日も記載します。キャリアップ計画書は通常取組日の前日までに提出が必要ですが、社会保険適用時処遇改善コースの取組については令和6年1月31日までに提出が必要です。既にキャリアップ計画書を提出している事業主も提出が必要です。
2.社会保険に加入した労働者に対して、メニューに応じた取り組みを実施します。「手当等支給メニュー」では、「社会保険適用促進手当」や「賃金の増額」などで労働者の収入を増加させます。「労働時間延長メニュー」では、「所定労働時間の延長」や「賃金の増額」などで労働者の収入を増加させます。
3.取り組みを実施した後、支給申請書と添付書類を事業所の所在地を所管する都道府県労働局に提出します。支給申請書には、取り組みの内容や実施期間、支給額などを記載します。添付書類には、取組開始前後の雇用契約書や労働条件通知書、賃金台帳などが必要です。支給申請の詳細は令和6年4月ごろ掲載予定の「キャリアップ助成金のご案内(令和6年度版)」に掲載されています。
4.都道府県労働局が申請内容を審査し、必要な場合は現地調査を行います。審査が完了したら、事業主に通知し、指定口座に助成金を振り込みます。キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)は令和7年(2025年)度末までの時限措置です。詳しくは厚生労働省のホームページや各都道府県労働局にお問い合わせください。