「当たり前」に感謝する 組織内の信頼関係構築へ/プラセール社会保険労務士法人 代表社員 原 彩子

2023.12.24 【社労士プラザ】
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プラセール社会保険労務士法人 代表社員 原 彩子 氏

 「嫌われたから働かないのですか。あなたはばかですか。労使関係は、感情でつながった関係なんかじゃない、労働と賃金を約束する契約関係です」。今秋放映していたテレビドラマで、一方的に解雇された労働者に対し、弁護士役の俳優が言い放ったセリフである。

 確かに労使関係は、契約関係だ。ただ、社会保険労務士として活動する過程で、労使関係は双方の感情が大きく影響を及ぼす、感情でつながった関係だとも感じている。

 なぜなら、関係が良好な組織ではトラブルが少なく業績が好調である反面、関係が希薄な組織ではトラブルが生じやすいという現実があるからである。信頼のない上司の言葉は、拡大解釈され、真意とは異なる捉え方をされてしまうことがある。

 物が溢れ、ほしいものはクリック一つで手元に届く時代。豊かになり、満たされることに慣れてしまった私たちは、「感謝」や「我慢」といった感性が鈍くなり、また技術革新の大きな流れのなかで人とのかかわりの機会が乏しくなってしまった結果、心を通わせた人間関係が築きにくくなっているのではないだろうか。

 「働いているのだから給与はもらって当然」、「給与を払っているのだから、部下は働いて当然」。こんな感覚が一般化しつつあるように感じる。この思考では、自分の期待が満たされなかった際に不満が噴出し、権利の主張が始まってしまう。

 少しだけ視点を変えて、今ある当たり前に感謝してみてはどうだろうか。「給与はもらって当然」という労働者。能力を発揮できるのは、安心して働ける場を提供してくれる会社があるからだ。「部下は働いて当然」という経営者。労働者が現場を守ってくれるから経営に専念できるのだ。

 そして、上司も部下も、大切なことは言葉で伝えてみよう。「ありがとう」、「助かります」。このような些細な会話から信頼関係が育まれ、組織一丸となって業績に貢献していく、そんな企業文化が醸成されていくのではないだろうか。感謝の気持ちでつながった組織は、強い。だからこそ、「労使関係は、感情でつながった関係」だと思っている。

 就業規則や制度などのハード面を整備することは大切である。だが、それと同等以上に人間関係の構築が重要であり、社会保険労務士として行うその支援は、大変有意義なものだと感じている。

 強固な組織づくりは、一足飛びにはいかない。日常を通してソフト・ハードの両面からより良い職場づくり、企業発展の一助となれることを理念に、活動している。

プラセール社会保険労務士法人 代表社員 原 彩子【東京】

【公式webサイトはこちら】
http://placer.or.jp/index.html

令和5年12月25日第3430号10面 掲載
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