【ひのみやぐら】作業服に着替える目的とは
目から鱗が落ちる思いをした。今号、「安全衛生眺めてみれば」では、作業服を題材に書かれている。筆者の東内さんが労働基準監督官になりたてのころ、工場へ臨検に行った際、純白の作業服に驚かれたそうだ。工場長は「美しい工場だからこそ、美しい製品ができると考えています。だからこそ、工場の中では特に、清潔で美しい服装でなければなりません。環境や製品を汚してはならないからです。作業で汚れるから作業服に着替えるのではなく、工場や製品を汚さないようにするため作業服に着替えるのです。純白であるのは、汚れがあることがすぐに分かるからです」と言っていたという。
この言葉から、安全や5Sが行き届いているのはもちろん、工程管理や生産管理がしっかりと行われていることが汲み取れる。さらには顧客に対してよい製品を作っていくのが、自分たちの使命という高い「プロ意識」を感じる。作業服のエピソードだけでも、さまざまな場面でレベルの高い工場というのがよく分かる。
一方で、作業服を正しく着用しない作業者にお困りの管理者もいるのではないか。作業服をきちんと着ることは、労働災害防止上、必要なことであると説明することが重要だ。安衛則110条では「事業者は、動力により駆動される機械に作業中の労働者の頭髪又は被服が巻き込まれるおそれのあるときは、当該労働者に適当な作業帽又は作業服を着用させなければならない」と示されているが、作業服に着替える目的は、「作業で汚れてもよいため」と認識している人が意外と少なくない。このため、ケガをしないために作業服を正しく着るということを教えなければならない。
上着の裾が出ていてコンベヤーに巻き込まれた、袖のボタンが外れていて旋盤に巻き込まれた、暑さで袖を捲くっていたら鋭利な物と接触して腕を切った、などの労働災害が実際に発生している。
清潔できれいな作業服を着用すると、身だしなみが整い自然と気が引き締まる。作業員も安全で効率よい仕事をしようとするものだ。冒頭の工場長は、美しい作業服の効果をよく理解されていたに違いない。