【主張】1600円超は皮算用か

2024.01.18 【主張】
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 連合は昨年末、2024年度の最低賃金の取組み方針を決め、地域別最賃の中期目標を更新した。国際的な基準を踏まえて新たに「一般労働者の中央値の6割」をめざすとし、35年には1630~1850円になるとのシミュレーションまで示している。168時間換算では月27万円を超えると考えると、約10年先の未来とはいえ、イメージするのが難しい。

 岸田文雄内閣総理大臣が、「2030年代半ばまでに全国加重平均が1500円となることをめざす」などと語ったのは、昨年8月末のこと。3%台の継続的な引上げを仄めかす目標に驚かされたが、連合のシミュレーションはこれをさらに大きく上回る。今後の賃上げが年2~3%で推移することを前提とするだけでなく、同時に雇用形態間格差の是正を意図している。

 一般労働者の中央値に対する最賃の比率について、連合では「47.8%程度」と試算している。賃金構造基本統計調査の22年結果を用い、賞与等を含めた1時間当たりの所定内賃金(=約2101円)と、現在の全国加重平均(=1004円)を比較したものだ。前者の6割に相当する水準が約1260円で、仮にこれが毎年2%ずつ伸びていくと、35年にはシミュレーションの下限1630円に達する。全国加重平均をそこまで引き上げるには、今後も23年度並みに4%を超える引上げを続けなければならない。

 約112万人の短時間組合員を抱えるUAゼンセンは今春、賃上げ交渉の要求方針として時給70円増を目安に掲げる見込みだ。スーパーマーケットなどの労組を含む流通部門では70円以上、外食などの労組を抱える総合サービス部門では80円を目安にする方針案を固めた。他方で流通大手のイオンは、すでにグループ内のパート時給を平均で約7%引き上げる方針を明らかにしている。少なくとも24年度については、地域の時給相場への影響が懸念されるところで、学卒初任給とのバランスについても無視できない。

 35年に1600円超をめざす目標が捕らぬ狸の皮算用になるのか否か、今後の動向が見逃せない。

令和6年1月22日第3433号2面 掲載
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